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モバイル業務改革を支えるサービスその1「GPS Punch!」(前編)【opinions】

前回、前々回と、業務用アプリをつくることを第1の選択肢にするのではなく、モバイルの業務活用ではまず既製品を使うべきだという主張をしてきました。ただ、「既製品が良い」「既製品にすべきだ」と言っているばかりでは無責任ですので、私が営業現場で頻繁にお勧めしているサービスをこの連載でいくつかご紹介します。

といっても自社の商品ではありません。それでは単に媒体を利用した広告になってしまいますからね。

ご紹介するのはいずれも他社様の商品です。さまざまなアプリ開発案件に関わり、モバイルを業務で活用する現場を見聞きしてきた経験から、「これは、確実に仕事のスタイルを変え、業務を改革し、今までITの恩恵を受けられなかった人も幸せにするサービスだ」と私が心底感じている商品のみを紹介するつもりです。

なお、単に商品説明をするだけでは面白くありませんので、開発元にインタビューしてそれを記事にすることとしました。なぜつくったのか、「現場」の声はどう取り込まれているのか、業務用アプリを独自に開発することについてどう思うかなど、いろいろと質問を投げかけてみた内容を書き起こし、機能的なことよりも開発元の想いや信念が伝わるような紹介ができればと思います。

GPSで働き方を変える営業支援クラウドサービス「GPS Punch!」

第1弾として、レッドフォックス株式会社の「GPS Punch!(ジーピーエス・パンチ)」というGPSを活用した営業支援サービスを紹介します。非常にわかりやすく解説されている以下の動画をまずご覧ください。

【3で分かる】GPS Punch! とは?【導入事例入り】

営業支援の分野でGPSというと、どうしても監視を第一義に持ってきがちです。しかし、GPS Punch! は監視することよりもむしろ、営業担当の煩わしさを解消したり、無駄をなくして効率と成果を上げることを徹底的に意識しているサービスです。導入した多くの企業様が営業効率UPによる売上増と顧客満足度向上を果たしていると言います。

その秘訣は、情報システム部門への迎合で結果的に使いにくくなるシステムを良しとしない考え方、徹底的にユーザーたる現場の人の声を取り込んでいく姿勢、それを可能としている仕組み、そしてモバイルで現場の働き方を変えていくのだという情熱などにあることを約1時間にわたるインタビューから知ることができました。

開発元であるレッドフォックスさんからお聞きしたお話を前後半に分けてご紹介します。GPS Punch! というサービスが如何にして生まれたのか、また現場とどのように繋がっているのか、GMBAのサイトをご覧になるすべての方に参考となる内容が詰まっていると思います。

お相手:レッドフォックス株式会社 代表取締役 別所宏恭氏、同社 林隆智様

聞き手:株式会社フィードテイラー 大石裕一

(大石)おはようございます。本日はどうぞよろしくお願いします。

(別所) よろしくお願いします。

(大石)モバイル営業改革の代名詞とも言えるGPS Punch! について、今日は開発に至った経緯や具体的事例、GPS Punch! に込める想いなどをお聞きできればと思います。レッドフォックスさんは、もともとWebシステム会社だったとお聞きしました。なぜGPS Punch! を開発することになったのでしょうか? 経緯を教えてください。

(別所)ウチは科学計算に始まって、UNIX、Oracle、Rational、UML、JAVA、BREWとソフトウェア開発の最先端を常に走ってきました。常々、ベンチャーが何かやるには世の中の変わり目、大企業がお金を使って宣伝していることに乗っかるしかないと思っていて、2008年のiPhoneアプリブームに乗っかることにしたのです。これは絶対にくるなと。

徹底的にiPhoneを研究してアプリを出して、当時Appleさんやソフトンバンクさんも全力でPRしてくれましたから、結構良いところまでいけました。ただ、自社アプリはB2Cでは儲からないなと気づくのにそう時間はかかりませんでした。やっぱりゲーム以外で、オリジナルで稼ぐのはとても難しい。とはいえ、実績があったので受託開発案件はものすごい数をいただいてましたけどね。
そうこうしてるうちに2011年、震災が起きました。地震、津波、原発。いろんなことが起こってたくさんの方が亡くなられて、ITや働き方について考える機会を得て、ふと思ったんですよ。GPSの位置情報をもっと活用していたら多くの命を救い出すことができたんじゃないかと。

(大石)震災でGPSについて考えるようになったと…。

(GPS Punch! の生みの親、別所社長)

(別所)ですね。もともと、BREWをやっていたときにGPS絡みのフィーチャーフォン(ガラケー)向けアプリはつくってたんです。自社用の勤怠管理がメインでしたけどね。一応、外販も試みたけどあまり受けが良くなかった。基本的にGPSって監視されてる気分をユーザーに想起させてしまうんです。不安を煽るっていうのかな。こそこそ隠れて会社側が見ている感があったし、当時はちょっと時期尚早だったのもあります。
そこで震災を機に、改めて正面からGPSと向き合うことにして、何が良くなくて何が良いのか、GPSというテクノロジーと真剣に取り組んで極めようと思いました。昔と違ってiPhoneっていう性能の良いモバイル端末もあるし、AWSが普通になってきてクラウド環境も整ってる。じゃあB2Bで、やましくない、働き方を変える良いGPSサービスを作ろうと。
2011年末に原型ができて、紹介すると結構な反響がありました。特に中小企業。暫くは水面下でやってましたが、2012年8月に正式サービスインして、11月にはソフトバンクさんに扱って貰うようになりました。そのままの勢いでITExpoにブースを出したらビックリするぐらいの人だかりができてしまって、会場にもご迷惑をおかけするぐらいになったんです。とにかく予想以上の反応で、各社100枚程度の名刺交換しかできてないのにウチだけは550枚。そこからGPS Punch! に全力投球ですよ。
当時、皆さんモバイルで働き方を変えられるはずだというイメージは漠然とありながら、解を持っていなかったんだと思います。そこに僕らがGPSを使って勤怠や報告を収集して活用するっていう現場の利便をわかりやすく提示した。だから関係者にとても響いたんだと思います。最初はぶっちゃけほとんど機能はなかったんですよ。GPSを使った勤怠記録や営業報告ぐらい(笑)。

(カタログには多数の機能が紹介されている。将来搭載予定の機能も)

(大石)いつも外回りのときにGPS Punch! のカタログを持ち歩いているんですが、更新されるたびにどんどんカタログが厚くなって、つまりは機能が増えてますよね。次々に進化している感じがします。勤怠や営業報告は当初からありますし、そこからさらに巡回経路管理とか、トラブル時の最寄り担当者への直行指示とか、安全確保や安否確認の機能も充実してきてます。最近は、名刺管理とか自動経路清算とか他社サービスとの連携も積極的ですよね。
(別所)お客様に使っていただくわけじゃないですか。そうするとお客様が「ここにも課題があるからこれを改善したいんだよ」とおっしゃるんです。その声をどんどん取り込んできました。GPS Punch! はお客様と一緒に作ってきたようなものです。
ウチの社員によく言ってることなんですが、「僕らが売ってるのはGPS Punch! ではない。新しい働き方を売ってるんだ」と。新しい働き方ってお客様や業務によって違ってくるので、その新しい働き方をお客様が発明して業務改革できるためのプラットフォームなんだよと。GPS Punch! の先には必ず使い手たる現場の方がいるんです。

(大石)だからあの動画なんですね。

現場のユーザーが働き方にイノベーションを起こす - GPS Punch!

(別所)そうです。重要なのはやっぱり現場なんですよ。管理職が見たいとか管理したいとか、ぶっちゃけどうでも良いと思ってます。今の現場の人たちがどうやったらもっと効率的に仕事ができるのかを考えたい。サボっているやつがいるとか、それを監視したいとか仰るんですけどね、そもそもなんでサボっているのかということを考えるべきだし、サボってるかどうかなんて判断つくわけないんです。成果が出ないのなら極端な話、クビにすりゃいい。
そんなことよりは、頑張ってるけどまだ成果が出ていない人を支援してあげたり、頑張っているんだけど成果が出ていない人のやり方を改善してあげたり、もっと成果を出したいと思っている人にさらに成果を上げてもらうために何が足枷になっているかを導き出して、それを取り除いてあげたり、現場に「時間」と「機会」と「安心」を増やすそういう業務改革、ここにウチは徹底的にフォーカスしていこうと考えてます。

(GPS Punch! は現場の人の気持ちを徹底して考えている)

もちろん、僕たちだけで考えてわかるものではないので、お客様の現場の人を巻き込んで進めていくわけなんですが、残念ながら管理者の方は「モバイルによる業務改革とは何たるか」をわかってないですよ。

(大石)現場の人を巻き込むのって、業務系のアプリだと難しくないですか? 特に中堅どころや大手さんだと、情報システム子会社さんとか力のある情報部門が間に入ってきて、現場の声を聞かせてくださいって言ってもヒアリングできなかったりする…。

(別所)そもそも、情報システム部門がフロントにいる、それだけ。って体制だと、業務改革プロジェクトとして巧くいくはずないですよ。情シスが現場をわかってないという面白い例があってですね。昔、レスポンス性っていう要件は必ず入れるようにしてました、RFPとかにね。この操作は何秒で終わらないといけないとか、この操作は何回で終わらないといけないとか。それがいつしか要件として書かれなくなった。現場の業務のことを真剣に考えていたら、自然に出てくる要件なんですけどね。仕事が回らないのわかるから。そういう発想がなくなったもんだから、SIerにつくらせるはいいけど、使いものにならない使いにくいものができてしまう。自前開発の失敗の多くはココが原因ですよ。

(大石)激しく同感です。GPS Punch! ではどうやって現場の声を聞くようにしたのでしょう?

(別所)これはですね、中小企業です。情シスいないんですよ。仮にいたとして前面に出てきたとしても、目の前の身近なところに現場担当者が必ずいるという規模感なので変なこと言えないわけです。すぐ(現場から)文句言われるから。今から思えば、GPS Punch! は中小企業から進めていったのが良かったかもしれないですね、現場の声をとても聞きやすかったです。


(大石)とはいえ結構な数の現場の人と話をしないと、これだけ太いカタログにはなかなかならないですよね?

(別所)要望を出すお問合わせボタン機能がアプリに用意されてます。ウチの担当営業に対して直接電話がかかってくることもありますが。問い合わせボタンからお客様が入力した内容や電話で営業担当が聞いた内容はすぐに社内のシステムに蓄積されていつでも見れるようになっていて、お客様の声をリアルタイムに全員で共有してるんです。

(大石)現場の意見を収集する仕組みが機能として備わってるB2Bサービスって珍しいと思います。

(別所)B2Cの時代からiPhoneアプリをやってたからですね。コンシューマ向けのアプリをやってきた経験がここに活きてると思います。

(大石)作り込みの歴史が本当に短期間で濃厚ですよね。単に言われた通り作ってる訳ではないでしょうし。やっぱり駄目出しが沢山あるからですか?

(別所)そうですね。弊社の全員がまず駄目出しします。ユーザでもありますし、GPS Punch! の機能を使ってウチの社員の意見を集約してるんですよ。三行提報と僕らは言ってますけど。思いついたものをパッと書いたらすぐ登録されて共有されるようになってます。なんでも良いから気がついたところを思いつくまま上げていきなさいということにしてる。これもモバイルだからこそ実現できることですね。GPS Punch! は現場の意見集約のプラットフォームとしても使うことができます。これを自社でも活用してるのが三行提報。勿論お客様からも駄目出しはありますよ。

(ちょっとした気づきもすぐに現場から集約される)

(大石)お問合わせボタンといい、三行提報といい、現場の声を即時収集して共有する仕組みがあるのは凄いことですね。ただ、開発部門の方々の反応が気になります。ぶっちゃけ反発ってないですか?場合によっては、別にこれでいいじゃないですか...ってな意見が返ってくるとか。

(別所)ありますよ。そりゃ絶対そう言いますよね。それを徹底的に教育するのが僕の仕事です。相当煙たがられてますし、相当なエネルギーを使っていますよ(笑) でもそれをやらないと絶対に良いものは作れない。だって分からないですから。基本デスクワーカーですからね。外で働いている人の気持ちなんて絶対に分からないですよ。
お客様のところに行って「あ、忘れた」ってなった時の心境とかね。でも電車に遅れてしまう!お客様との約束の時間もある!どうしよう!うーん…ってそういう状況にデスクワーカーはまずならない。だからモバイル向けの業務用サービスは、開発者だけでは絶対に良いものはできません。

(大石)なるほど。逆に開発の方はストレスがたまりそうなのも気になりますね...。

(別所)他のところで解消してもらってます。大切なのは、どうあるべきかの議論では、絶対にお客様のことを考えてないといけないってこと。例えば、GPS Punch! はおじいちゃんやおばあちゃんもユーザーにおられますから。警備会社様とか。老眼の人の気持ちが分からないといけないんです。だから老眼の僕が文字が小さくて見えないって言わないといけない。開発は「こうすれば見えるじゃないですか」って言い返してきますよそりゃ。でもね、ピント合わないっつーのと(笑)。

(大石)お客様を代表する声が社内で飛び交うのってすごく良いと思います。


(後編に続く)

執筆者

大石裕一氏/1975年大阪生まれ。大阪府立大学工学部卒業後、ソフト開発会社にエンジニアとして入社。6回の転職でWindows/Mac/Linux/組み込み系、ネットワーク系の開発やマネージャ経験を経て、2006年株式会社フィードテイラーを設立。エンタープライズiOS分野を得意とし、安易な新規業務アプリ開発を否とする考えを持つ。自社で開発したクラウド型ファイル共有サービス「SYNCNEL」を海外含む約200社に提供中。