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今あるルールと、今あるべきルールの違い【opinions】

top 01©Ammentorp Photography

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今から2年前の2013年3月、あるコンピュータ雑誌で「iOSと日本社会に足りないもの」と題するコラムが始まった。モバイルとは単にモバイル機器を指し示すのではなく、モバイルという「いつでも、どこでも、だれでも」の状態を指し示す。その“モバイル”をビジネスの現場に活かすことにどれほどの可能性が秘められているのかについて、名だたる大手企業に対しコンサル・人材育成を提供している人物が提言するという、いわばビジネスモバイル論といえる内容だった。ここではそのコラムを今後チョイスして再掲していくわけだが、IT業界における2年といえば激動の進化。「そんな古いものを」と思われる輩もおられよう。しかし、選択肢が増え、導入障壁が低くなっただけで、モバイルは考えずに使えるほどまだ成熟してはいない。テクノロジーを活かすも殺すも結局は人である。変えるべきものは何なのかを今一度考える機会にしてもらえれば幸いだ。

第19話 今あるルールと、今あるべきルールの違い

セキュリティ事故が増えている。日本ネットワークセキュリティ協会の調査によると、2013年の「個人情報漏えい」事故だけでも1333件発生したとのことである。実に、漏えい人数にして931万2543人、損害額にして2020億円超と集計されている。今や企業のリスクマネジメントにおいて、情報セキュリティは最優先課題の1つであり、各社とも投資を加速している。

情報セキュリティを守るうえでは、技術的な安全措置を講じるだけでは不十分であり、人的な安全措置を考え、実行する必要がある。具体的にいうと、厳密なルールをつくり、そのルールの運用を徹底することによって、故意や過失で情報セキュリティを脅かす行為を抑止しなければならないということである。やはり最後は人であり、大半の善人のセキュリティ意識を向上させつつ、一部の悪人に対して「悪事を働いたらバレて、大変なことになるぞ」と脅さないといけないのである。

当然のことながら、iOS導入の現場でもセキュリティポリシーなどのルールを守ることが前提であり、その重要性は否定できない。しかし問題なのは、ルールでがんじがらめにし過ぎてはいないか?という運用視点での現実性だ。本来、組織におけるルールというのは、さまざまな考え方を持ち、多様な働き方を求める人々が、お互いの存在を認め合い、ともに協力するためのものだ。つまり、多様な価値観に基づく自由な考えや行動を尊重するためにルールは存在するのであり、単に規制をかけて自由を奪うというのは本末転倒なのである。

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例えば、PCを導入した際に制定された「社外に持ち出すときには、上長の承認を得て、管理簿に記帳すること」というルールをiPadにも適用しているといった事例が挙げられる。モバイル機器のモビリティに対して制約を課すという信じられない事態が起きているのである。少なくとも以下の3つの観点で組織内のルールを点検してみてほしい。

まずはルールの目的・趣旨の振り返りだ。何のためのルールかがわからないまま、「そこにルールがあるから」という理由でみんなが理不尽に思いながらもルールを順守しているというケースになっていないかということである。ルールには必ず、制定されたときに狙いとしていたことや守りたい価値があるはずだ。その出発点に立ち戻って再評価することが必要なのである。

次は外部環境との整合性だ。例えば、技術進化の影響によって時代錯誤なルールになっていないかを振り返るべきだろう。ルールというのは外部環境の変化の後追いをせざるを得ないものであるが、ここまで環境変化のスピードが速いと、せっかくつくったルールもすぐに廃れ、再び理不尽に陥る可能性を認識しておくべきだ。

最後に、ルールが犠牲にしている価値である。ルールを守ることによるメリットとデメリットを客観的に評価するということである。規制により、守られる価値と犠牲になる価値の両方をみて、バランスを評価したうえで、そのルールが本当に必要かを見極めるのである。

点検ができたら、いよいよルールを変えるときだ。組織が大きくなればなるほど、ルールを変えることに対する抵抗感やあきらめが見受けられるが、ルールは状況に応じて変えなければならないのである。 本誌が出る頃にはアベノミクス解散による総選挙の結果(2014年1月時)も見えている。我々は今の日本の実情に合ったルール(法律)づくりのできる国会議員を選ぶことができただろうか。日本社会全体でも、各企業などの組織でも、ルールを固定化することなく、絶えず進歩させていきたいものだ。

初出:Mac Fan 2015年2月号

今あるべきルールなのか点検すべき3項目
・何のためのルールなのかわかっているか
・時代錯誤なルールになっていないか
・ルールを守ることによるメリットとデメリットを客観的に評価できているか

執筆者

福留大士/1976年鹿児島県生まれ。株式会社チェンジ代表取締役COO。アクセンチュア勤務後、27歳で独立・開業し、大手企業に対するスマートデバイス利活用、BYODなどのコンサルティングや人材育成のサービスを提供している。