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モバイルの今を知る

なぜ“IT”ではなく“ICT”と呼ぶのか? それは“C”が未熟なためである__iTeachersカンファレンス2015前編【topics】

4月26日、教育ICTを通じて「新しい学び」を提案するエデュケーターチーム・iTeachers(アイティーチャーズ)が、3回目を数える大規模カンファレンスを東京・デジタルハリウッド大学駿河台キャンパスで行った。本稿タイトルに使用した「なぜ“IT”ではなく“ICT”と呼ぶのか? それは“C”が未熟なためである」は、iTeachersの1人、神戸大学・特務准教授の杉本真樹氏が発したプレゼン冒頭の言葉である。“C”とはコミュニケーションを指す。

グローバル化した多様性のある社会をこれから生き抜いていく必要のある子どもたちにとって欠かせないのは21世紀型スキルだと言われている。では、そのスキルはデジタル機器を導入すれば解決するのだろうか? 21世紀型スキルを20世紀型の教育体制が教えられるのか? そもそもなんのためにICT機器を用いるのか? 答えはイエスでもありノーでもある。言い換えれば、いち早くチャレンジし、失敗から学び、経験値を高めた教育現場はすでにイエスを実感している。そして、ノーからイエスへ移行させるためには、“C”の成長を育む環境が必要不可欠なのである。

教育現場で日々、教育ICTの実践を通じてその在り方を模索し続けるiTeachersの生の声からは、いわば正解という枠では収まらない「納得解」こそが、子どもたちの“C”の成長に寄与することがよくわかった。いつもモノが先行してしまう日本、いつも言葉(かけ声)が一人歩きしてしまう日本。テクノロジーの進化に人が追いつけていないままで、いいわけはない

『iPad教育活用7つの秘訣』発刊がきっかけ

2013年3月に発売された『iPad教育活用7つの秘訣』(ウイネット刊)。本書はさまざまな先駆的な教育ICTの実践現場を取材し、そのケーススタディを一冊にまとめた内容である。共著の1人である教育ICTコンサルタントの小池幸司氏が本書出版記念パーティで、「チームをつくって今後も活動していきたい」と発言したことがきっかけでiTeachersは誕生した。結成2周年、この間、大小併せて6、7回のイベントが行われてきた。3年目になる今回、そろそろ何か再び新しいことを、という意味を込め、「Next Stage」をテーマに9名がプレゼンテーションを行った。

Next Stage筆頭プレゼンターは片山敏郞氏。テーマは「これからの学力形成と情報リテラシー」。氏は1年前に公立小学校から付属小学校(新潟大学教育学部附属新潟小学校)へ移り、現在3年生を担当している。プレゼンでは昨年4年生を担当していた際のプロジェクトが紹介され、iPadが一人1台、21世紀型の能力を児童が身につけるための道具(インプットとアウトプット)として有益に使われている様子が語られた。

 

2人目は玉川大学教授の小酒井正和氏で「インダストリー4.0へ向けた学びの姿」 。大学において今頃21世紀型のスキルを身につける…などと言っている間に、産業構造はますます急変の一途をたどっている。産業が変わっていくのなら、そこで稼げる人材を育てる必要、これが教える(大学)側の目標であるべきという持論を展開した。目下、受け持つ理工系学部で取り組んでいるのはIoTであり、問題や課題を考えるうえで重要な視点・視野・視座を今あるテクノロジーから学生に実践を通じて感じてもらうことだと言う。

 

3人目はICT教育で有名な佐賀県で、公立中学校の教諭を務める中村純一氏。テーマは「"preparation"〜do the things we can do now〜」で、自らデジタルガジェット好きを公言しているものの、単に道具があれば子どもたちの関心や興味を引き出せるわけではなく、そこに至るまでの過程のオプションとしてツールがあるべきで、それにはファシリテーター側である教師の準備(preparation)が大切ではないか、という投げかけを自らの例を題材に紹介した。

4人目の登壇はデジタルハリウッド/デジタルハリウッド大学の栗谷幸助氏。これまでデジタルハリウッドが取り組んできた教育におけるさまざまなデジタルの利活用を振り返りつつ、「NEXTAGE EDU GENERATOR 2015」をテーマに、教える側はEDUのジェネレーターになる必要性を説いた。学生にとって学習が楽しくかっこいいものとして映るには、社会の現場ですでにいいものとして認知されはじめたテクノロジーをいち早く取り入れることが有益である。その一例として、テレビ会議室「appear.in」による遠隔地でのプレゼン合戦や、「prott」を使ったアプリ開発を紹介した。

 

5人目には大阪大学教授の岩居弘樹氏による「アクティブな学びを支える名脇役」 。工学部の初級ドイツ語学科においてモバイル機器の利活用を実践している。現在の外国語学習のイメージは、「詰め込みが多く、からだを動かすことを行っていない」と話す岩居氏は、数年前からiPadおよび既存アプリのコンビネーションによって「からだが先で、後であたま」の教育スタイルを取り入れている。言語習得が日常生活と変わらぬ身近なものであることをからだで理解させるために、学生たちにグループビデオ制作を行わせている。自分たちでシナリオを書き、その役柄を演じ、ビデオ撮影していく。出来上がった作品は、学生たちがこの取り組みを積極的に楽しんでいる様子が伺える。そしてそれらどの過程においても有益なのが、支援ツールとして使う秀逸な既存アプリ群であり、結果、アプリがいい意味でアクティブな学びを支える名脇役になっている。

6人目のプレゼンは、神戸大学/医師・医学博士の杉本真樹氏の「心を動かす体感型IT教育の秘訣」。人は何かを自立してできるようになると、誰かに伝えたくなり、他の人に教えたくなる。これがティーチングであり、ティーチングにITを役立てていくことはとても重要だと杉本氏は話す。ではITとはなんなのか? 日本ではなぜか教育とICT(あるいはIT)教育を別物のように区別したがるが、アメリカではそのような区別はしない。理由は、ITはすでに当たり前のものであり、C(コミュニケーション)も当たり前のこと。そして目的はティーチングであり、その目的を達するためにITを役立てているにほかならないからだ。大切なのは、人に説明して人の話を聞く_"Show & Tell"。この当たり前のコミュニケーションが、ひょっとすると子どもたちにも大人たちにも足りていないのかもしれない。ここを促進するためにITが存在するわけで、杉本氏は、これにはリアルもバーチャルも駆使していくことが、いずれ領域を超えた学びにつながるし、教域の解放にもなると指摘した。

 

新たなステージ、iTeachears TV

9人のiTeachersによるプレゼンテーションのうち、6名を紹介したが、あと3人のプレゼンおよびその後に行われたトークセッションについては後編でお届けすることにする。お楽しみにしていただきたいが、ここで少々告知である。

4月29日からiTeachersはYouTubeチャンネル「iTeachers TV(アイティーチャーズ・ティーヴィー) 〜教育ICTの実践者たち〜」を開設した。教育ICTの実践とノウハウが凝縮されたオンライン番組で、今後、iTeacherのメンバーのみならず、出演を希望する先生、学生・生徒たちのプレゼンテーションのほか、ICT活用のヒントを伝える「教育ICTなんでも3ミニッツ」が毎週水曜日夜に配信される。GMBAもこのiTeachersの活動を応援しており、今後はGMBAサイト内でも同番組コンテンツを掲載していく。

■ iTeachers TV 〜教育ICTの実践者たち〜

 

執筆者

小林正明(GMBA編集部 編集長)_雑誌編集に従事する傍ら、2010年以降はもっぱら関心事がモバイルに移り、教育、ビジネス、医療におけるモバイルの先端事例を追う中で、「日本のモバイルITは、本来届くべきところに届いていない」ことを痛切に実感。日本に残された最後のチャンスはモバイル革命だと信じ、GMBAに参画する。