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不動産、住宅業界が注目する「地盤情報の見える化」【apps】

多くの人々にいまなお記憶に新しい東日本大震災。5年後の3月11日、アップルストア銀座では「地盤と不動産の情報をiPadで見える化しよう」というイベントが行われた。登壇したのは地盤ネットホールディングス株式会社の山本強代表取締役。創業からたった4年で東証マザーズに上場を果たした会社だ。同社の唯一無二なサービスはいま、iPadアプリとともに全国で急速な広がりを見せている。本稿ではイベントレポートを通じて、唯一無二な理由を解き明かしていく。

 地盤安心マップ、地盤カルテ

「駅の近いし、陽当たり良好。ここにするか?」
「地盤はどうなの? あっ!パパ、知ってる? そこ、むかし沼だし…。液状化リスクが!」

皆さんは「地盤カルテ®」という無料Webサービスをご存じだろうか。調べたい住所を入れると、たった1分でその土地(もしくは周辺から導いた)災害リスクを診断してくれるサービスである。このサービスを提供するのは地盤ネットホールディングス株式会社で、そのテレビコマーシャルの一幕がこのセリフだ。

近しいところでは、2年前広島県で起きた土砂災害、昨年は北関東豪雨被害による鬼怒川の決壊、同じく昨年秋に杭工事偽装が発覚した横浜マンション不等沈下など、災害や被害は残念ながら起きてしまっている。これら被害や災害が、万一自分に振りかかるとしたら、天災だ、運が悪かったで済まされないだろう。目に見える立地のみならず、事前に地盤の状態を知る手段があれば、災害や被害リスクを最小限に食い止められる対策や、あるいはそもそも住まないという選択も見えてくるはずだ。

家を選ぶとは地盤を選ぶこと

東日本大震災から丸5年の3月11日、アップルストア銀座で行われたイベント「地盤と不動産の情報をiPadで見える化しよう」では、地盤ネットの山本強代表取締役が、地盤・災害・不動産情報を視覚的に見える高機能なiPadアプリ「地盤安心マップ®PRO」、天気予報のように簡単に地盤リスク情報を示すことができるWebサービス「地盤カルテ®」を紹介した。

冒頭、山本氏は「家を選ぶとは地盤を選ぶこと。土地や地盤に関する情報を事前に知っておけば、すべての被害や災害は予期もできたし、避けることもできたであろう」と話す。山本氏が2008年から始めたこの地盤に関するビジネスは、災害や被害を未然に防ぐ手段として、いま住宅・不動産業界から熱い視線を集めている。

これまでの住宅選びは、土地、建物という目に見える範疇での判断が中心だったが、建物の安全性の観点から「地盤」を見直す手段が加わることで、単にその地盤が良い・悪いだけではなく、悪いなら悪いなりにどう対策を図れば安全性が高められるのか、という次元で住宅選びが行えるようになる。

「いま、世の中がどんどん透明化・見える化している流れのなかで、住宅業界の世界は、まだまだ不透明で見えない世界である。そこをなんとかしたかった」

8年前に創業した理由をこう話す。なぜ同じ地区なのに、道路を挟んでこちらでは液状化の被害が発生したのに、あちらでは被害が発生しなかったのか。災害による影響が起きてしまってからでは後の祭り、建ててしまってからは時すでに遅し。そうならないためには、「どんなサービスを提供することが購入者にとっても業界にとってもいいのか」。山本氏が出した答えは、「業界の不透明な理由は、建物、土地、地盤の三位一体で連動した住まいの考え方。これを実現するためにITを使って改革する」だったと話す。だから社名は地盤ネット。地盤とネットは相反するものだが、ITによる見える化という観点でいえば、なるほどと思える命名だ。 

住宅業界のなかで解決に至っていなかった課題

同社は、いわば日本における地盤のプロ集団だ。国内では年間約40万戸の住宅が建てられているが、そのうち同社が地盤調査をしている戸数は5万戸。オリジナルの半自動地盤測定機も開発しており、わずか6年ほどで急激な地盤調査受注市場を拡大、牽引している。これほどの急激な成長を見せている背景には、毎年のように大きな地盤災害が発生しているだけでなく、そもそも住宅業界のなかで解決に至っていなかった課題が大きい。

災害リスクはいまに始まったわけではないが、まず住宅や不動産を供給する側は、上モノには詳しくても地盤にはあまり知識のない人も多い。また、不都合な事情をあまりオープンにしにくい供給者側の問題も存在する。一方で、購入者側は、どこで地盤情報を知ることができるのかがわからなかったり、ハザードマップを見てもよくわからないなど、結果として土地購入後に初めてリスクがあることを知るという大きな問題が続いていた。

下図は、土地を買って家を建てるまでの一般的なフローである。駅から何分とは方角といった表面上の情報しか知らされないなかで検討し、購入を決めたら次は住宅会社の確定、設計プランや見積を経て、ようやく購入した地盤の調査が入る。ところが、ここで初めて地盤が悪いことが発覚したら、プラン変更どころか後戻りもできない。

この不都合に対し、最後に地盤の状況を知る、あるいは有事が起きてはじめて知るのではなくて、土地を購入する前に、できるだけ情報をオープンにすることはできないのか。これができれば逆戻りしなくてもすむ。このフローを一般化させるためには業界全体のパラダイムシフトが必要だ。つまり、事前情報をどう伝えるのか?

地盤ネットは、地盤情報の見える化をネットで公開する選択をした。まず先に、地質・災害履歴などがわかる「地盤安心マップ®」を公開。基礎データは80%が公示されているもので、20%が日々地盤ネットが調査しているデータに基いている。このマップはGoogleマップ上に、地盤改良工事が不要なところと地盤改良工事が必要なところがマークで表示されるほか、1974年〜現在に至るまでの航空写真もレイヤーされているため、例えば現在の陸地が昔は陸地ではなかった、なども瞬時にわかる。

この見える化を民間企業が公開するだけでもすごいことなのだが、実は地盤情報はこれまでも別の形で事業者間での確認には使われていた。しかし、その情報は一定の知識がないと読み取れない情報で、誰でもがわかる情報にはなっていなかった。そこで、同社は地盤安心マップ®をさらに誰もが情報を読み解けるように、リスク項目を点数化しチャート図で瞬時にわかるサービス「地盤カルテ®」を公開。これにより、住所を入力するだけで一般の人でもその土地(あるいは周辺)の地盤診断が行えるようになった。

iPad向けアプリ「地盤安心マップ®PRO」の投入

地盤安心マップ®は、地盤の強弱をはじめとしたさまざまな地盤情報を閲覧できる無料サービスだが、Webブラウザベースゆえ、使い勝手はそれなりである。そこで同社は、iPad向けアプリ版として、UI/UXに重点を置いた高機能事業者向けマップシステム「地盤安心マップ®PRO」を開発、App Storeで公開した。

地盤安心マップ®PROは事業者向けの有料サービス(1アカウント5000円/月)で、不動産会社・店舗はもとより、住宅関連イベント、モデルハウス等での利用などで広がりを見せている。このアプリ開発を行ったのは株式会社ジェナで、イベントには同社代表取締役の手塚康夫氏も登壇。ネイティブアプリの特性を活かしたレスポンス、マニュアル不要なユーザーインターフェイスなど開発の意図について説明を行った。

過去から現在に至る土地形状の推移をスライダでスムースに表示できるなど、ネイティブアプリならではのUI/UXの特徴を持つ。

ちなみに、地盤安心マップ®PROは、マップだけにiPad Proの広い画面があるといっそう効果を発揮する。ピンチイン・ピンチアウトを繰り返して詳細情報を確認するより、12.9インチの大画面があればひと目で地盤情報をお客さんに見せられる。

対面の店舗業務でタブレットが利用されるケースは年々広がっているが、この「地盤安心マップ®PRO」がある種のキラーアプリとして、今後ますます不動産店舗でのタブレット利用促進に貢献する気がしてならない。

 

AUTHOR

小林正明(GMBA編集部 編集長)_雑誌編集に従事する傍ら、2010年以降はもっぱら関心事がモバイルに移り、教育、ビジネス、医療におけるモバイルの先端事例を追う中で、「日本のモバイルITは、本来届くべきところに届いていない」ことを痛切に実感。日本に残された最後のチャンスはモバイル革命だと信じ、GMBAに参画する。