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萌えキャラが読む「天声人語」 - 朝日新聞の挑戦は吉と出るか凶と出るか【期間限定公開】【apps】

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企業が開発するアプリは、業務用途で使うものだけではありません。その企業の業務内容とは、一見なにも関係ないようなアプリが一般向けにアプリストアで公開されていたりします。本連載では、有名企業がリリースした、ちょっと意外なアプリをピックアップし、そのアプリを出した企業側の思惑を読み取っていきます。

第9回 「天声人語」をキャラクターが読み上げる学習アプリ「聞かせて天声人語」

新聞の部数減が進む中、朝日新聞社が始めた新たな試みが話題になっています。あの「天声人語」を萌えキャラが読み上げるアプリ「聞かせて天声人語」です。

天声人語は古くから朝日新聞に掲載されてきた読み物で、大学の入学試験などに例文として使われることでも知られています。朝日新聞の虎の子ともいえるコンテンツである天声人語が、まさか萌えキャラのゲームアプリになって登場するとは誰が予想したでしょうか。

アプリの紹介をしましょう。

ゲームは「シナリオ」「天声人語読み上げ」「クイズ」で構成されています。収録されている天声人語は、2014年3月~2015年6月掲載分から厳選した30編。メインとなるのはもちろん人気声優による「天声人語読み上げ」なのですが、そこに「シナリオ」と「クイズ」の要素を入れることでゲーム性を入れ込み、ユーザーのモチベーションを高めています。

シナリオに登場するメインキャラクターは伊勢ひなた、出雲姫子、伏見由遊香の3人で、それぞれ柚原有里さん、瑞沢渓さん、やなせなつみさんが声を担当しています。

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3人は三笠女学院放送部に所属する放送部員で、朗読コンテストの優勝を目指して特訓に励んでいます。そこで練習の一環として3人が行っているのが、「天声人語」の読み上げというわけ。シナリオを読み進めると3人の物語が展開され、「天声人語」を美しいボイスで聞けるという仕組みです。さらに天声人語の内容をもとにしたクイズが毎回用意されており、正解すると彼女たちのアイテムやボイスを入手できます。つまり、天声人語を聞き流すのではなく、しっかり内容を把握する必要があるのです。ゲームとしては比較的シンプルですが、「天声人語」を読んでほしいという狙いを達成するためによく計算されたゲームシステムだといえます。ちなみにサイドストーリーでは別のキャラクターも登場しており、竹達彩奈さんや三上枝織さんといった人気声優が出演しています。

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それにしても、なぜ朝日新聞社がこうした取り組みを始めたのでしょうか。

一つには冒頭でも書いた若者の新聞離れを危惧してのことでしょう。まだまだメディアとしては強い影響力を誇る新聞ですが、若者を中心に部数は着実に減少しており、各社危機感を募らせています。

そんな中でこうした萌えコンテンツに手を付けたのが朝日新聞であることに驚く方もいるかもしれません。しかし、実は朝日新聞は早くからネットへの対応を進めており、最近では新聞ならではの取材力とネットならではの機動力を生かした「withnews(ウィズニュース)」というニュースサイトの運営も行っています。内部でも特に若手にはネットに精通した記者も多く、今回の「聞かせて天声人語」もおそらくそうした層が主導して企画されたのではないかと予想します。

一方で、内外からの反応は賛否両論といったところ。ユーザーだけでなく、朝日新聞記者からも「よくやった」という声と「ほかにやることがあるのでは」という戸惑いの声が両方聞こえてきています。

たしかに萌えコンテンツは若者との距離を縮める上で非常に強力なツール。しかし、それだけにユーザーの見る目は厳しく、「こんなもんでいいだろう」と雑に作ったコンテンツは必ず見ぬかれて失敗に終わってしまいます。外から見るよりもはるかにシビアなマーケットなのです。

そこにあえて挑戦した朝日新聞の試みが吉と出るか凶と出るかは、今後の展開次第。プレイした印象では、最初の一手としては悪くないものの、コンテンツとしてはまだ未成熟な感は否めず、今後のアップデートでさらに完成度を高める必要があると感じました。「天声人語」の名を冠した以上、中途半端に終わることなく継続していってほしいと思います。

 

「聞かせて天声人語」

【App Store】

 

Author

山田井ユウキ#Follow スマートフォンとタブレットを愛するITライター。MacFan、マイナビニュースなどで記事を執筆するほか、ラジオ出演、トークイベントも行っている。著書に「サイバー戦争」(マイナビ新書)など。