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リアル店舗とECを融合したシステムで効率化と売上げ増を実現するABCマート【後編】【case study】

靴の小売りチェーンとして、国内のみならず海外へにも店舗を展開しているABCマート。同社はiPadを使ったユニークなシステム「iChock」を導入している。リアル店舗とECをうまく融合させたそのシステムは着実に実績を上げ、現在ではなくてはならないものとなっている。導入した経緯やもたらした効果などについて、担当者に話を聞いた。

顧客にもメリットが浸透。新規出店の加速にもプラスに

現在は百貨店の中などの一部の店を除き、全店舗にiPad+iChockが導入されている。

「iPadは店舗に1台。しかし大型店や多フロアの店舗の場合は複数台を導入してます。現在までトラブルはほとんどありませんね。落下して画面を割ってしまったというところが1店舗だけありましたが、ほかは問題ありません。思った以上に丈夫です」

販売スタッフには受け入れられたiChockだが、店舗を訪れる顧客の反応はどうなのだろうか? 井上氏に聞いてみた。

「お客様には、便利だと喜んでもらってますね。特に抵抗はありません。住所や氏名の入力に関しても、紙に書くよりiPadへの入力のほうが気軽にできるという声を聞きます」

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iChockの入力画面。スタッフが聞き取って入力することもある

そして注目したいのが、一度iChockを経験した客の変化だ。

「iChockを利用して靴を購入したことがあるお客様は、『ABCマートなら、たとえ店に在庫がなくても希望のものが購入できる』ということをご理解いただいています。そのため欲しいものがあれば、とりあえず販売員に声をかけるように変化しているようです。ものを販売する会社としては非常にありがたいことです」

iChockの認知度が高まることで、販売機会が増えたわけだ。靴という商品はサイズがあるため、すべてを用意しようとするのは難しい。また同時に、靴という商品は実際にものを見て履いてから購入したい商品でもある。実際の商品を手に取れるリアル店舗で在庫の豊富なECサイトのサービスも受けられるiChockは、画期的なサービスだといえる。

「"ABCマートなら探してくれる、購入できる"という印象が、もっと広がってくれればと思います」

ところでこのiChockというシステムは、実は商業施設への出店の際にも強みになると井上氏は語る。一般に通販を導入している店舗は、ショッピングモールなどの商業施設に出店しにくい。店舗ではなくネットでの売り上げになってしまうと、大元のデベロッパー(管理会社)が受け取る金額が減ってしまうからだ。

「しかしiChockは、ネットを活用するものの会計はあくまでもお店で行う。従って店舗の売り上げとなります。独自のシステムのため説明に苦労することもありますが、理解していただけると『顧客のためになるサービスなので、ぜひやってほしい』と言われることが多いですね」

売り場面積の狭い店舗でも、さまざまな商品を扱うことができ、売り上げも店舗のものとなる。このiChockならではの特徴を生かすことで、商業施設などへの出店のチャンスも増えているという。

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ショッピングモール内の店舗。スペースは限られているがiChockのおかげでさまざまな要望に応えられる

販売スタッフは自信を持って接客できるように。リアル店舗をサポートするiChock

iChockそのものは、運用当初からのほとんど変わっていないそうだ。唯一の変更点は、iChockと連動するカタログ機能の追加だ。

『お店の在庫にはない、しかしお客様が欲しいモデルがある』といった際にカタログで画像などを確認し、お買い上げいただくという機能です。特に指名買いの場合に有効ですね。購入時には、類似した商品を履いてもらって足のサイズを確認することもあります。販売スタッフは靴の商品知識が豊富なので、そういった販売方法も可能なんです」

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iChockに追加されたカタログ機能。指名買いなどの際に有効に使える

このようにiChockを使いこなせるようになり、販売スタッフにも変化が現れてきたと井上氏は話す。

「なんといっても、自信を持って接客できるようになりましたね。iChockを活用すれば、サイズを含めてお客様の要望にしっかり応えることができ、さまざまな提案をすることができる。これは強みになりますね。スタッフの積極性が増しているように思います」

iChockは単なるツールではなく、販売スタッフにとっての力強いバックボーンになっているという印象だ。ところで前述のように、ABCマートはECサイトも運営している。運営上の問題などはないのだろうか。

「実は、iChockとECサイトの在庫は共通となっています。そのため、人気商品は取り合いのようになることもあります。当然ながら、どちらも売上げを拡大しようと努力をしていますから。そのあたりが、今後の課題といえるでしょう」

とはいえABCマートにとっては、やはりリアル店舗が最も重要なのだと井上氏は強調する。

「実はECサイトの売上げを分析してみると、ABCマートのリアル店舗が多い地域が通販の売り上げも多い。しっかりとリアル店舗で接客や販売を続けてきた、そのおかげだと思ってますね。リアル店舗があってのECサイト、個人的にはそう考えています

また、次のようなエピソードも披露してくれた。

「ABCマートのECサイトへ訪れた人の流入検索キーワードを調査してみたんです。すると、靴のメーカーやモデル名ではなく“ABCマート”というキーワードが一番多かった。それだけ、ABCマートのリアル店舗が認知されているということでしょうね」

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同社のECサイト。“ABCマート”というキーワードで検索し、たどり着くユーザーが多いとのこと

デジタルの有効性を大いに利用しながらも、あくまでリアル店舗にこだわるABCマート。iChockは、そんな企業風土から生まれた同社ならではのソリューションだといえよう。

 

AOUTHOR

矢口和則(エディトル所属の編集者)/Macの専門誌の編集に携わったのち、書籍やムックなどの制作に関わる。最近では、Webメディア向けの記事の執筆や編集といった仕事が多い。