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モバイルで働き方を変える!IT先進事例を生む佐賀県・テレワークの取り組み【後編】【case study】

医療、福祉、教育など地方自治体が抱える課題はさまざま。人口減少や財政問題なども絡み合い、有効な施策を打ち出せずにいる自治体も多いだろう。そんな中、ITを駆使して次々と課題解決に挑むのが佐賀県だ。佐賀県からは今、地方自治体が抱える地域課題をITで解決する先進事例がいくつも生まれている。後編では、佐賀県が取り組むテレワークの事例を紹介しよう。

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佐賀県 統括本部 情報・業務改革課 業務改革担当 係長 陣内清氏と、同部同課 最先端電子県庁担当 係長 松永祥和氏に話を聞いた。(平成28年3月時点の職名)

全国初、全庁の約4000人を対象にしたテレワークを本格導入

2011年に県内全ての救急車にタブレットを配備した佐賀県は、その取り組みが一定の効果を得たことを受けて、2014年、今度は全庁の約4000人を対象にしたテレワークを本格導入した。

本格導入に至った経過としては、まず、テレワークを導入する前の2013年に、約100台のiPadを導入し、庁内から「モバイルワーク推進事業」を公募して実証事業を実施した。タブレット端末がどのように業務にいかせるのか、また、どのような効果が得られるのか。さまざまな部署から課題と効果を記した提案書を受け付け、その採用者にiPadを配備した。その結果、業務効率化の結果が得られたことから、2014年に約1000台のタブレット端末を追加導入し、テレワークを基盤にした事業拡大を図った。

佐賀県ではテレワーク導入する目的として、モバイル端末の活用を通して職員の多様な働き方を実現するとともに、県民に近い行政を目指したい考えだ。佐賀県 統括本部 情報・業務改革課 業務改革担当 係長 陣内清氏は、「働き方の多様化も目的のひとつだが、これからの職員はオフィスに縛られず、もっと外に出て県民と近い場所で仕事をしていく必要がある」と語る。そのためにテレワークを導入し、職員が外に出やすい環境が必要だというのだ。

佐賀県ではテレワークの形態を「在宅勤務制度」「サテライトオフィスの設置」「モバイルワーク」の3つに分けて事業を進めている。それぞれを詳しくみていこう。

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職員の判断で、その日の働き方を選べる在宅勤務制度

佐賀県ではテレワークを導入する以前の2008年より、在宅勤務制度に取り組んでいたが利用者が増えなかったという。その要因として陣内氏は、「当初は介護や育児の場合に限るなど利用制限を設けていたこともあるが、なによりも在宅勤務を組織として受け入れる文化が育っていなかった」と話す。在宅勤務をすることに後ろめたさを感じる職員が多く、取り組みを広げるためには啓蒙することも必要だったというのだ。

そこで佐賀県では、多くの職員が在宅勤務できるように人事部門への申請ナシで利用できるようにした。「今日は10時からアポイントが入っている。オフィスに行かず在宅勤務をしてから訪問先に行こう」「今日は子供が風邪気味なので、午後から在宅勤務にしよう」という具合に、職員がその日の都合に合わせて働き方を決められることが特徴だ。

勤務の流れとしては、在宅勤務をする場合は、1日の業務を事前に報告する仕組みだ。それに対する進捗状況も最後に報告せねばならない。また在宅勤務の途中で、育児や介護のため作業が中断した場合は終わりの時間をずらす。コミュニケーションツールを用いて現場と連携をとりやすくするなど、工夫もされている。

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サテライトオフィスとモバイルワークで、より効率的な働き方を目指す

佐賀県は2013年に、モバイルワーク推進実証事業と並行してサテライトオフィスを設置した。現在は、県内と県外に計15ヶ所のサテライトオフィス設置し、職員の働き方に変化を与えている。サテライトオフィスには、Webカメラも用意されており、会議もできるようになっている。

モバイルワークでは、さまざまな業務の電子化を進めている。大量の紙の資料を持ち歩くことなく、動画や電子カタログをプレゼンテーションに使用したり、タブレットで資料提示ができるようにした。負担軽減だけでなく、情報漏えい防止などのリスク軽減にもつながっている。また電子決裁済も徐々に利用範囲を拡大中だ。出張中の上司の帰りを待つことなく、業務を進めることができるので、現場の効率化にかなり寄与しているという。ほかには、グループウェアを使って職員の予定表を共有可能にし、コミュニケーションの円滑化にも成果を上げている。

テレワークの今後の課題とは?

テレワークの課題でよく挙がるのが、コミュニケーションロスの問題だ。これについて佐賀県は、専用のコミュニケーションツールを導入して対応するとともに、全ての職員のパソコンにカメラをつけて、いつでも連絡がとれるようにした。陣内氏は「iPadを持っていれば、車の中でも会議ができるようになった。オフィスにいないからといって会議を諦めずに済む」と語る。また松永氏は「ビデオ会議のシステムは災害時にも有効であるため、多数の拠点から会議に参加できる仕組みにこだわった」と語る。

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テレワークの今後の課題については、電子化できない書類に対する解決策を見出していくことだ。電子化を制限されている書類があり、紙ベースでしか処理できないものも多数ある。松永氏は、「技術的には電子化する方法はあるが、制度が整っていない。この課題に対しては佐賀県だけが取り組んで解決できる問題ではないので、国や業界の動向に合わせて改善していく必要がある」と語る。

職員のテレワークの利用率は増えつつある佐賀県。しかし、働き方を多様に、ドラスティックに変えていくためには、まだまだ啓蒙を続ける必要がありそうだ。陣内氏は「一方的な押し付けでは上手くいかず、まずは職員が行動を変えてみないと意識も変わらない。やってみたい人に協力してもらうような形で、今後も多くの職員を巻き込んでいきたい」と抱負を語る。

AUTHOR/神谷 加代