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本来の仕事に集中させてくれる会計ソフト【case study】

freeeは無料から使える全自動のクラウド型の会計ソフトだ。経理までやらなければいけない社員数100人以下の企業オーナーの作業負担を減らし、「本来やるべき仕事」に集中できる環境を作ってくれる。

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freeeはクラウド会計ソフト。アカウントさえ作成すれば、MacやPC、タブレット、スマートフォンからでも利用できる。また、スマートフォン向けの専用アプリも用意されている。データ保存期間が1カ月限定の無料プランのほか、青色申告対応の個人授業主プラン(月額980円)、会社法準拠の決算書に対応した法人プラン(月額1980円)があり、いずれも3ユーザまで利用できる

 

徹底的な自動化

読者のほとんどの方は、好きだから今の仕事に就いているはずだ。しかし、領収書の整理や税務申告が大好きという人はそう多くない。誰もが「やらなくて済むならやりたくない」と思っているのではないだろうか。ITの力はそうしたところで発揮されるべきであり、「freee(フリー)」は登場すべくして登場したクラウド会計ソフトといえる。

freeeの特徴は「わかりやすさ」と「自動化」だ。複式簿記の構造を持ち、青色申告や会社法準拠の決算書に対応しているが、作業そのものは家計簿や小遣い帳感覚。そのわかりやすさを支えているのが「自動化」だ。銀行口座を登録すると取引履歴を読み込み、相手先名を自動登録、内容から自動で種目の仕訳まで行ってくれる。たとえば「トウキョウガス」の引き落とし履歴があれば、自動的に「東京ガス」「光熱費」と仕分けてくれる。また、freeeで請求書を作成して発行し、先方から口座に振り込みがあると、支払いが済んだことまでチェックしてくれる。オンラインを活用して、経理まわりの自動化できるところは徹底的に自動処理してくれるのだ。

そして最近、さらに誰もが欲しかった機能が加わった。経費計算の自動化だ。領収書やレシートをスマートフォン内のfreeeアプリから撮影すると、自動的に日付や金額が読み込まれる。そして決済の決定権を持つ上司などがfreeeを使って承認すると、自動的に経理処理に回される。

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入力は家計簿や小遣い帳感覚で行える。銀行口座の履歴は自動で読み込み、種目の仕訳も自動で行う。内部は複式簿記方式になっているので、青色申告や正式な決算書作成にも対応している。

「仕事が楽になった」の賞賛の声

freeeはリリースから1年7カ月、すでに14万事業所で使われている。その多くはフリーランス、個人商店、社員数数十名のスモールビジネスユーザだ。

「この規模のオフィスでは、経理と給与計算の専任担当者をなかなか置けません。そこで社長や社長の奥さんが、ほかの仕事の片手間に経理をすることになります。その負担が大きすぎて、本来やるべき仕事の時間が削られてしまうのです」(freee代表取締役・佐々木大輔氏)

freeeは、スモールビジネスの経営者を経理、税務といった時間から解放する。山形県で料亭「白ぎく」を継ぎ、3代目女将となった米本志穂さんもfreeeのユーザだ。お子さんが3人いるため家事も忙しく、とても経理事務まで手が回らない。freeeはクラウドサービスであるため、PC、タブレット、スマホがあれば、どこからでも作業ができる。料亭でも自宅でも作業ができ、さらには手がまわらないときは夫に手伝ってもらうということで経理業務がこなせるようになった。また、アカウントを共有しておけば複数の人で作業ができるというクラウドの利点もある。

また、乗馬体験&乗馬ツアーを主催しているY’ism代表取締役・吉村優一郎さんもfreeeを使うことで、業務を大きく効率化した。仕事は国内、国外に行って乗馬体験会などを開催すること。現場で現金収入があるが、従来はまとめておくだけで、本格的な会計処理は会社に戻ってからやるしかなかった。しかし、今では現場でリクルートが提供しているiPad用レジアプリ「エアレジ」を利用して、売り上げデータはそのままfreeeに連携されて渡される。現場で経理処理まで行えることで、毎日1時間は仕事が早く終わるようになったという。もちろん海外で体験会を催しても、ネット環境さえ確保できれば、国内と同じ感覚で経理処理が済むことになる。

また、面白い事例が伊豆大島の居酒屋「よりみち」だ。伊豆大島には税理士がいない。そのため、申告の時期になると、他所から交通費を支払って出張してもらわなければならなかった。本来税理士がすべき税務処理面のアドバイスもなかなかうまく通じないという現状があったのだ。しかし、今ではfreeeを使い、税理士用のアカウントを作成したため、遠隔地の税理士がリアルタイムで「よりみち」の経理状況を知ることができる。

「freeeは社員数70名を超える企業になりました。でも、経理専任、給与計算専任の人間はいません。freeeですべて行っています」。freee自体がfreeeのユーザで、経理や給与計算などはマーケティング担当者が本来の仕事をやりながら行っているという。社員数70名の会社で経理専任者がいないというのは従来の常識ではありえなかった話だ。

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収入先の比率などリアルタイムの経理状況のレポートも出力してくれる。このような経理情報は個人事業主は常に把握しておく必要があるが、現実はそうなっていない。年に一度の決算期になって初めて「ウチはこんな状況だったのか」と気がつくことが多いのだ。レポートの内容はごく一般的なものだが、それをリアルタイムで把握できることに意味がある。

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家事にも忙しい「料理白ぎく」の女将が、料亭を継げたのはfreeeのおかげ。料亭事務所においてあるパソコンだけでなく、自宅のパソコンからも経理処理ができるようになったからだ。また、アカウントを共有している夫に経理処理を手伝ってもらうこともある。

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伊豆大島には税理士がいない。しかし、今では税理士が遠隔地から「よりみち」のfreeeにアクセスすることで、日々の状況をリアルタイムで把握できるようになった。遠隔地から財務状況を見られることもクラウドサービスの利点で、海外進出を考えている企業は経理もクラウド化を考えておく必要がある。

 

目指すはプラットフォーム化

日本の企業数は約600万社、そのうちのほとんどが中小企業だから、freeeの市場は500万社ほどある計算になる。「できるだけ早い段階でユーザ数を100万事業所まで増やしたい。そしてfreeeをプラットフォームとして、freeeユーザの間で完全電子商取引ができる世界を作りたいのです」。現在、freeeで請求書を発行するとそれはPDF書類として出力され、メールで送るというのが一般的だ。相手先が紙にこだわる場合は、プリントして郵送することになる。しかし、取引先もfreeeを使っているなら、請求をわざわざ送る必要はない。freee同士であれば請求データのみをやりとりすればいいからだ。

同時にfreeeは海外進出も考え始めている。「税務部分に関しては国によって制度が大きく異なります。でも、会計部分というのは世界共通なんです。税務と会計を切り離すことで海外進出は十分に可能です」。

ただし、具体的な戦略については考え中で、まずはfreeeを隙のないサービスにすることが先決であるともいう。事実、freeeはほぼ毎日のようにバージョンアップが行われる。「利用者の方の声を聞きながら、より使いやすいものにどんどん変えています」。一般に、経理担当者はインターフェイスが変わることを嫌うものだが、意外にも不満は少ないという。「ユーザさんはfreeeがどんどん進化し、昨日できなかったことが今日できるようになっているところに期待してくれているのだと思います」。

クラウドの登場はビジネスを大きく変えたが、経理のクラウド化はスモールビジネスの世界では、「社員を本来の仕事に集中させてくれる」効果がある。スモールビジネスのオーナーが秘書をやとわずにスマートフォンで自分のスケジュールを管理するようになったのと同じく、あと数年で、経理もオーナーが自分のタブレットで処理する時代になっているのかもしれない。

freeeが思い描く「プラットフォーム化」と「海外進出」が実現されると、国際取引も大きく変わるだろう。特に日本はアジア圏との取引は日常的なので、アジア圏にfreeeが普及するだけでもビジネスは様変わりする。言葉の壁、通関の壁、輸送業者との受け渡しなど、国際取引は日常的になったといっても膨大な手間と注意を必要としているからだ。

そのような「プラットフォーム化」「海外進出」が可能になるのは常識で考えれば5、6年後ということになる。「いや、それでは遅すぎます。そんな遠い将来のことなんか考えられません。1、2年で実現しなければ意味がない」。ビジネス環境の変化は、年々速度が増しているが、すでにギアチェンジしてシフトアップしているのかもしれない。

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freeeの注目される新しい機能が、レシートの自動読み込み機能。スマホのfreeeアプリで写真を撮るだけで、日付や金額を読み込み、種目の仕訳も行う。上司が経費支払を承認すれば、あとは自動的に経理処理が終了する仕組みだ。多くの企業では社員が経費申請書を書き、上司が承認、経理が再度入力するという二度手間、三度手間になっている。社員全員の負担を減らしてくれる機能だ。

 

【OCR】レシート読み取りのOCR精度は現在90%程度。しかし、10枚の領収書を手入力することを考えたら、写真撮影するほうがはるかに簡単だ。「常に僕たちは現実解を目指しています」。OCR機能はあくまでも入力の補助なのだ。

【非公開】freeeは代表電話番号が非公開。ユーザサポートもメールとチャットのみ。電話サポートよりもチャットサポートのほうが、ユーザにとって利便性が高く、満足度が上がるためだという。

初出:Mac Fan Web 

執筆者

牧野武文#Follow テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。IT関連本を中心に、「玩具」「ゲーム」「論語」「文学」など、幅広くさまざまなジャンルの本を執筆。著書「Macの知恵の実」「横井軍平ゲーム館」「大失言」「萌えで読み解く名作文学案内」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」など。