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ビジネス向けiPadアプリ開発は次のフェーズへ 前編【case study】

タブレットのビジネス利用が加速している。編集部ではその現場の状況を探るべく、早くから企業向けのスマートデバイスアプリの開発やサポートを行ってきた株式会社ジェナに取材。ここ数年におけるアプリに対するビジネスニーズの変化について、そして今後の可能性などについて、興味深い話が伺えた。

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iPadアプリ開発のリーディング企業「ジェナ」

2006年に設立された株式会社ジェナは、スマートデバイスをビジネスで活用する企業のサポートを行っている会社だ。

「元々は携帯電話が主軸だったのですが、2009年以降はiPhoneを中心としたスマートフォン向けのビジネスを開始。そして2010年のiPadの登場を機に、タブレット向けのビジネスもスタートさせています」

こう語るのはジェナの代表取締役社長の手塚康夫氏。ジェナではこれまで、100社を超えるクライアントに対して600以上のスマートデバイスアプリを作ってきた。おそらく日本国内では、BtoB向けのアプリを最も多く制作している会社の1つといえるだろう。

同社では、社内で使う業務アプリから、店頭などで使うアプリまで幅広くサポートしている。また特徴的なサービスとして、「seap(シープ)」というプラットフォームの提供も行っている。

「企業向けのアプリ開発を行っていて気付いたのは、業種や業態を超えて共通化できるアプリが多いということ。だったら共通の部分は開発プラットフォームを用意して、ユーザーが自由にアプリを作成できるようにすれば、開発コストや制作期間が大幅に削減できるはずだと考えました。これがseapです」

seapを利用するユーザーは、WEBブラウザからアクセスできるCMSを利用して、あらかじめ用意されている汎用的なテンプレートに画像や動画をドラッグ&ドロップ。するとiOS向けのアプリを簡単に作成できるという仕組みだ。月額利用料が10万円という価格設定も非常に戦略的で、現在までに端末ベースで50,000台に導入されている。

「一般的な業務に関してはseapでサポートし、より個別的な業務向けの、カスタムメイドでしかできないアプリに投資の比重を大きくする、という流れになっています」と手塚氏は話す。

なおseapに関しては、当初は「アプリ開発プラットフォーム」と謳っていたが、現在では「スマートデバイスの活用プラットフォーム」だとしているそうだ。

「プログラマーやデザイナーを介さず、誰でも簡単にアプリを作れるサービスということを、よりアピールするためです。アプリによっては3分程度で作れるんですよ」

seapに関しては2012年のMac Fan誌でも取材を行っているので、併せて参照していただきたい。https://book.mynavi.jp/macfan/detail_summary/id=27646

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株式会社ジェナ 代表取締役社長 手塚康夫氏

 

顧客のリテラシーが高くなりニーズも大きく変化 

seapがスタートしたのは、2012年のこと。この約2年半の間で、スマートデバイスのアプリ開発を取り巻く環境には、どのような変化があったのだろうか。

「2012年の時点では、まだiPadなどのスマートデバイスを導入するお客さまは、非常に先端的な企業が多かったですね。しかし現在では、仕事でスマートデバイスを使うということが、一般的になってきました

手塚氏によると、カタログやアンケートのためのアプリ開発などには、もはや企業は大きな投資をしなくなっているという。その代わり、より業務に直結したアプリや、社内の基幹システムと連携するようなアプリが強く求められるようになってきている。単なる紙の書類の電子化といったフェーズはすでに終了しており、スマートデバイスを使ったビジネスは次の段階に移行しつつあるということだろう。

「seapを使った事業も成長しているのですが、実は予想以上にカスタムメイドアプリの需要が急激に高まっています。特に実際の業務で役に立つ、現場に即したアプリですね。もはや生産性を10%上げるといったことではなく、ワークフローそのものをアプリ導入で刷新し、生産性を10倍にできないか、といった根本的な変革と大きな成果が求められています」

顧客のリテラシーがこの2年間で大きく向上し、iPadなどのタブレットへの期待が高まっているということだろう。もちろんカスタムメイドのアプリの制作にはコストがかかる。しかしそれに見合う生産性の向上に関して、顧客側も明確なビジョンを持っていることが多いそうだ。

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seapのカタログアプリの作成画面。ユーザーはコンテンツなどをドラッグ&ドロップすることで、容易にスマートデバイス用のアプリを作成できる。

 

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作成したiPad用のカタログアプリの画面。紙のものとは異なり、動画なども組み込むことが可能。素材がそろっているのなら、3分程度で作成できるとのこと。

 

アプリの開発には顧客とのディスカッションが必要 

 「カスタムメイドのアプリを作るには、クライアントとのしっかりしたディスカッションが必要です。例えば求められているものが、我々から見ればありえないくらい使いづらいインターフェイスでも、それまで現場の人が使っていた帳票などのフォーマットは、再現する必要があったりします。その辺りは、実際に話をしてみないとわからない」と手塚氏は語る。

スマートデバイスのアプリは、シンプルで誰にでもわかりやすいインターフェースが求められる。しかし業務用のカスタムアプリに関しては、それが正解とは限らないというわけだ。

「完全にデジタルに切り替えられない部分もありますよ。そういう場合は紙の書類と併用するシステムを選択することも。顧客は業務のプロ、我々はスマートデバイスのプロ。納得のいくまでディスカッションを行い、着地点を見つけます」

 

後編に続く

 

取材・執筆:矢口和則(エディトル)

 

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