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広尾学園、生徒の学ぶ選択肢を広げる「受験サプリ」【case study】

進学実績も向上!タブレットは授業の枠を越えるツール

全国的にもIT先進校として有名な広尾学園中学校・高等学校(以下、広尾学園)は、東京都港区にある共学の私立中高一貫校だ。同校は2007年からインターナショナルコースを皮切りにBYODを実施しており、2011年には医進・サイエンスコース、2012年には本科コースと段階的に端末導入を進めている。広尾学園では、生徒が在籍するコースによって使用する端末は異なるものの、2015年4月現在、iPad、MacBook Pro、Chromebook、Kindleなど、全校生徒の約8割にあたる1200名が何らかの情報端末を活用して学習する環境が出来上がっている。

広尾学園におけるBYODの取り組みで陣頭指揮を執るのが、教務開発統括部長 金子暁教諭だ

金子教諭は2007年から実施したBYODの成果として、「教育活動のベースにICTを位置づけたことで学習内容や活動が広がり、結果として偏差値や大学進学の実績につながってきた」と語る。2010年から2015年まで、広尾学園は国公立大学の合格者を4名から29名に、早慶上理を6名から152名に、GMARCHを14名から224名へと伸ばしており、IT活用が学校内で広がるのとともに、進学実績も向上している。

BYODやIT化の取り組みが、生徒の学力向上にどう影響を与えたかを示す数値的なデータはない。だが金子教諭は、「BYODを導入し、1人1台デバイスがある環境をベースに教育活動がデザインできるようになったことは、これまで学校に存在してきたさまざまな制約を取り払うことを可能した。これにより生徒の活動が広がり、新たなキャリア教育やプログラムへの挑戦も増えた。その結果、生徒の大学進学に対する意識が変わってきたのではないか」と分析している。
 
誤解を恐れずにいうなら、広尾学園は今まで“大学合格”という目標に向かって生徒や教員は勉強に向き合っていた。ところがBYODを進めたことで、授業の枠を超えて生徒が社会とつながりやすくなり、研究活動やボランティア活動、体験授業や専門性を高める講習など生徒の興味・関心を深めたり、大学の先にあるものを見せられる機会が増えた。これにより、今まで大学合格という漠然とした目標に向かって勉強していた生徒たちが“将来何を目指すか、何になりたいのか”、キャリアビジョンを描けるように意識が変化し始めたことが進学実績に影響しているのではないかというのだ。「BYODを実施した当初から、タブレットの“活用”に終わらず、新しい教育活動を取り入れることを重要視してきた。進学実績は、その意識の変化がもたらした成果だと考えている」と金子教諭は語る。


勉強と部活動以外にも何かをしたい。そのために学習効率を上げたい

そんな広尾学園だが、2015年4月より新たな教育活動の1つとして受験サプリを導入した。金子教諭はその目的として「生徒が学べる選択肢を増やすため」と説明している。

学校の授業は、大多数の生徒が理解できるように進められる。しかし、一定の割合で“もっと先へ進みたい”というモチベーションを持つ生徒と、“もう一度、再学習したい”という生徒が存在する。そのような生徒に対して、「学校は今まで講習や補習を設けることでしか対応できておらず、あとは塾や予備校に通って自分でなんとかするしか生徒は選択肢がなかった」と金子教諭は語る。

広尾学園は、そんな生徒たちの限られた選択肢を増やすべく、1人1台体制を生かしてオンライン講義の受験サプリを導入した。インターナショナルコース(AG)のみ希望制で、登録制の他コースと合わせるとおよそ1000名以上の生徒が登録していることになる。これについて金子教諭は「今の生徒は、勉強と部活動の両立だけでなく、さらに他の活動に関わりたいと考える者が多い。そうした場合、いかに学校の勉強や受験勉強の効率を上げるかは生徒にとっても課題なのであろう」と分析する。“勉強の効率を上げて他のことに時間を使いたい”、そう考える生徒たちが受験サプリに期待しているのではないかというのだ。

 

一方で、金子教諭は「受験サプリが“絶対的に良い”という考えはなく、今後、コンテンツがさらに充実していかなければ再検討する方向性もあり得る」と語っている。生徒の学ぶ選択肢を増やすためのオンライン講義だが、提供するだけに終わらず、内容にもこだわっていく考えだ。「受験サプリに期待しているところは、受験勉強に対するスキルを提供できること」(金子教諭)。広尾学園では“教員が何から何まで教えないといけない”という発想はなく、外部の価値あるサービスやコンテンツは積極的に導入する考えを持っている。「従来の学校の常識や教師の在り方に囚われることなく、生徒が何を学べるのか、何を選択できるのか、その部分を大切にしている学校の価値が今後は高まると考えている」と金子教諭は語る。 

執筆者

神谷加代/フリーランス・ライター。2010年にアメリカから帰国後、ブロガー&ライターとして活動を開始。主婦向けにタブレットの活用方法を綴ったブログなどで情報発信を行う。2012年に教育関係者向けの書籍『iPad教育活用 7つの秘訣』を執筆。以後、Webメディアを中心に教育IT関係、キッズプログラミングの分野を多く取材。教育IT系のコンテンツ制作やプロモーションなどにも携わる。