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静岡英和女学院、地方の伝統女子校が目指すiPad活用とは?(前編)【case study】

静岡英和女学院中学校・高等学校(以下、静岡英和女学院)は、全校生徒が460名の小規模な中高一貫の女子校だ。創立128年の伝統があり、カナダに4校の姉妹校を持つなど英語教育が充実している。同校は2014年度よりiPadを導入しBYODをスタートした。導入経緯や活用方法など、同校の教務部長/ICT推進委員 小山祥史教諭とICT推進委員長 杉浦俊樹教諭の2人に話を聞いた。

生徒と教師、“信頼ベース”でiPadを活用したい

静岡英和女学院のiPad導入の目的は、大きく分けて2つある。ひとつは「従来の授業の効率化」、もうひとつは「生徒の理解度の向上と自立型学習の追求」だ。同校は礼拝時間を毎朝設けているため、すべて45分授業で行われている(中高の授業は通常50分)。そのため、45分授業でも50分授業と同じ、あるいはそれ以上に相当する充実度を図ろうと現場では努力が続けられてきた。この課題解決にICTが生かせると考えたのだ。また、もうひとつの目的である生徒の理解度の向上と自立型学習の追求については、リクルートマーケティングパートナーズの「受験サプリ」を採用した。これについては後編で詳細を紹介する。

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2014年度にスタートした静岡英和女学院のiPad導入だが、初年度は、高2の国公立大学を目指すアドバンストクラスの生徒全27名を対象に実施された。これについて小山教諭は「学校内におけるiPadの使用目的が“学習用途”であることを定着させていきたい。そのためには、使い方のモラルが守れる高2が望ましいと判断した」と説明する。一方で生徒に「“〜してはいけない”」と教員が一方的に決めてしまいたくもない。「iPadの活用は生徒と信頼関係で進めていきたかった」(小山教諭)と話しており、iPadの使用に関するルールなども生徒たちが話し合って決めた。事前の保護者説明会でも「今の子供はデバイスを持つのが当たり前の時代。ただし学校で使う場合は、その目的が何かを明確にしてほしい」という考えを持つ保護者が多いことも分かった。もはやICTを教育で使うか使わせないかの議論ではない。目的意識をいかに生徒に持たせることができるか、学校に対する期待はそこにある。

iPadを選択した理由については、「他の端末は初めから考えていなかった。生徒のほとんどはiPhoneを所有しており、iPadならスムーズに活用を進められると考えた」と小山教諭は語る。また、大抵の教育機関では学校がiPadを一括購入するケースが多いが、静岡英和女学院では小規模校であるため、学校注文と個人購入の2つから選択できるようにした。学校の推奨機種としてiPad Air2 Wi-Fiモデル16GBを指定し、iPad miniやWi-Fiモデル64GBの使用も認めた。結果的には、全員が個人購入を選び量販店などで購入、その後、生徒が購入したiPadを学校へ持ってきて小山教諭と杉浦教諭でキッティングを行った。

eiwa01ICT推進委員 小山祥史教諭(左)とICT推進委員長 杉浦俊樹教諭(右)

ICTの魅力を他の教員に伝えたのはApple TVとプロジェクタ

多くの教育機関では、ICTの不得手な教員に対してどのようにデバイスの活用を広げていくかが課題になることが多い。生徒に対しては“使えること”を前提に進めていけるのに対し、教員の場合は操作や使い方など説明が必要なケースがあり、校内研修会を開いている学校も多い。静岡英和女学院の場合、教職員はiPad導入の1年前からペーパーレス化に取り組んだ。全教員で30名ということもあり、クラウドストレージの「Dropbox」を利用して紙の書類をPDF化し全員で共有することからスタートした。

小山教諭は、他の先生が“自分もやってみよう”と思える決め手になったのは、iPadとApple TV、プロジェクタを使って、スライドや問題の表示が簡単にできることではないかと語る。静岡英和女学院では、専任教員全員にiPadを配備し、全普通教室にホワイトボード一体型プロジェクタとApple TVを整備している。これにより、教員は予め準備したスライドや、授業で学ぶ単元の教科書や問題集の一部をPDF化し板書や問題提示にかかる時間が短縮できる。「今までは、問題や解答を黒板に書く授業だったが、今は一瞬で提示できるようになり、その分、机間巡視ができるようになった」と小山教諭は語る。このような手軽な表示方法を知った教員たちが、「これなら自分にもできる」と思い、ICTの活用が校内に広がったというのだ。静岡英和女学院に限らず、授業の中で“見せること”にストレスを感じている教員は、意外と多いのかもしれない。

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杉浦教諭は、教員が予測していない生徒のiPad活用法に手応えを感じている。テスト前、生徒らはわからない問題を手に教員の前に長蛇の列を作る。教員は今まで一人ひとりに対し説明を行っていたが、ある日、生徒がその様子を動画に撮影し、他の生徒へ配信した。「教員よりも、生徒の方がiPadをどこで活用できるかを知っている」(杉浦教諭)。iPadの使い方については、教員が何から何まで知っておく必要はない。生徒にデバイスを与えれば、自ずと使い方が見えてくることもある。静岡英和女学院では、この出来事をきっかけに動画配信に挑戦する教員も現れて、使い方が広がっているという。

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今後の展開として杉浦教諭は、「教員によるSNSの活用」「iTunes Uの活用」を広げていきたいと話す。これは、先のような経験から、教員の視点でiPadの活用を探るのではなく、生徒が利用しているサービスや使い方の中から学習に生かせるものはないかを見つけていく考えだ。SNSに関しては、教育用SNS『Ednity』を活用してすでに取り組みを始めている。iTunes Uに関しても、非公開でスタートしており、今後はコミュニケーションと学習コンテンツの充実を目指す。

 

執筆者

神谷加代/フリーランス・ライター。2010年にアメリカから帰国後、ブロガー&ライターとして活動を開始。主婦向けにタブレットの活用方法を綴ったブログなどで情報発信を行う。2012年に教育関係者向けの書籍『iPad教育活用 7つの秘訣』を執筆。以後、Webメディアを中心に教育IT関係、キッズプログラミングの分野を多く取材。教育IT系のコンテンツ制作やプロモーションなどにも携わる。