Log in

クラウド活用でデバイスは活きるか。iPhone+chromebookという選択。(後編)【case study】

訪問看護などのヘルスケア事業を展開するケアプロ株式会社。2年ほど前から業務効率化のためスマートデバイスを導入し、着実に成果を上げているという。さらに導入から約1年を経過したところで、デバイスを一新、より効果的なIT活用を進めている。前編ではどのようにスマートデバイスを活用されているか紹介してきたが、後編ではどんなデバイスを使用しているか、話をうかがった。

iPhone+Chromebookというスタイルにアップデート

iPadを導入してから約2年が経過したが、実はケアプロのシステムには、その間に2つの大きな変更がなされている。その1つが、iPadからiPhoneへの転換だ。前編で紹介したように、iPadの導入によって業務の効率化が実現された。それにもかかわらず、なぜiPhoneに変更したのだろうか? 岩本氏は次のように説明してくれた。

「第1の理由としては、デバイスの棲み分けが曖昧だったということが挙げられます。ガラケー+iPad+パソコン(事務所)というシステムだったんですが、iPadはパソコンと役目がかぶる部分がある。またガラケーとiPadの両方を携帯するならiPhoneに統一したほうがいいでしょう。利用するデバイスは、少ないほうがスムーズですから」

またiPadには、単純にサイズが大きいという問題もあった。例えば患者の腰の部分の床ずれの写真を撮る際に、腰を片手で支えながら、もう一方の手で患部を撮影する、というのがiPadでは難しい。特に手が小さい女性の看護師の場合はなおさらだ。その点iPhoneなら片手でも写真が撮りやすい。

しかし、画面の大きさなどはiPhoneのほうがはるかに小さい。業務に使う上で問題はなかったのだろうか?

「まず私がiPhone 6を購入し、検証を行いました。その結果、業務に使うのに問題は無いという確証を得たんです。文字入力も、iPhoneなら片手で行えるので、むしろ楽でした。いまのところ、スタッフからも評判もいいですね」

もう1つの大きな変化が、Chromebookの導入である。Chromebookはご存じのとおり、Google Chrome OSを搭載したパソコンで、比較的低価格で起動などが高速といった特徴を持つ。一方で、データはオンラインストレージのGoogleドライブに保存する仕様で、利用できるアプリはWebブラウザー上で動作するもののみといった制約もある。

「文章や報告書をつくるには、やはりキーボードがあるノートパソコンが必要です。Chromebookを選んだのは、もともとGoogleサービスを活用して業務を行っていたので、このデバイスで必要十分だろうと考えたからです。コストの面でも魅力的でしたし、軽量で起動も速い。機能が制限されているぶん、セキュリティや使い勝手の面でもメリットを感じました

現在ケアプロの訪問看護のスタッフは、iPhone+Chromebookというスタイルで仕事を行っている。どちらも入社時に支給しているという。現場の反応も「手持ちの荷物が少なくなった」「各デバイスの使い分けがシンプルになった」と好評だという。

07 IMG 4330ケアプロが導入している「HP Chromebook 11 G3」。動作が速いので、ストレスフリーな活用が実現しているそうだ

ただしiPhoneと組み合わせるのであれば、MacBook Airといった選択肢もあるだろう。あるいは逆に、ChromebookとならAndroid端末という組み合わせも考えられる。その辺りの疑問を岩本氏にぶつけてみた。

「確かに、そういう指摘を受けることもあります(笑)。ただ、iPadとGoogleサービスを活用していたという、これまで使い慣れた環境を引き継ぎつつ、最大限に効率的な組み合わせを考えた結果なんです。実際、Googleアカウントで統一しておけば、iPhoneとのやり取りもスムーズ。iPhone+Chromebookというスタイルが、弊社のワークスタイルには合っているということです」

08 IMG 4322iPhoneとCromebookで業務をこなすケアプロのスタッフ


訪問看護へのハードルを低くするスマートデバイスの可能性

記事冒頭に「訪問看護の需要が高まっているが供給が追いついていない」という岩本氏の言葉を紹介した。改めて現状を聞いてみると、事態はかなり逼迫しているらしい。

「看護師さんの人数でいうと、訪問看護に携わっている方は4万人程度。業界団体では、あと10年で15万人に増やすという目標を掲げています。しかし、実際にはなかなか増加が見込めないのが実情ですね。人材確保に苦労している訪問看護の事業所は多いです

その背景には、訪問看護は新卒や経験の浅い看護師には難しい、という思い込みが存在していると岩本氏は話す。その結果、看護学校などを出た看護師は一般の病院などに就職するのが普通となり、訪問看護、在宅ケアといった選択は選ばれない。その結果、訪問看護師の方の平均年齢は47歳ぐらいになっているそうだ。

「ベテランの看護師しか務まらない、というイメージがあるんですね。確かに訪問看護は、1人で患者さんの家に訪問してケアを行います。しかし患者さんに1対1で接するという点は、普通の病院も同じです。もちろん病院であれば、医師やほかの看護師に相談できるわけですが、それは訪問看護でも電話などがあれば可能です。距離の違いがあるだけなのです

その距離を埋めるツールとして、iPhoneなどのスマートデバイスは有効だと岩本氏は続ける。

連絡手段として、情報共有ツールとして、画像などをやり取りするツールとして、スマートデバイスは非常に有効です。新卒や若手の看護師の方にも、iPhoneを活用した訪問看護にチャレンジしてほしいです」

若い世代のほうが比較的ITリテラシーが高い点にも、岩本氏は着目している。同業他社では、スマートデバイスを導入する際のネックとなるのがリテラシーであることが多い。その点ケアプロの場合は、比較的若いスタッフが多いこともあり、導入がスムーズに行えたという。新卒の看護師であれば、ITを使った訪問看護にも抵抗が少ないだろう。

こういった状況の中ケアプロは、看護教育で有名な聖路加国際大学との共同事業に着手している。また同時に、訪問看護師にチャレンジしたいと考えている新卒、新人看護師のための応援サイト「CAN-GO!も開設。訪問看護師のインタビューや見学に関する情報などを発信している。

「聖路加さんとの事業では、新卒の訪問看護師を育てるための教育プログラムをつくっています。また訪問看護に関するセミナーなども開催しています。こういった取り組みやスマートデバイスの活用で、若い看護師が訪問看護の世界に飛び込むためのハードルを下げたいと考えています」

09 訪問看護を目指す学生や若手の看護師のための情報サイト「CAN-GO!」。ケアプロが運営している

確実に拡大する業界でありながら、人手不足で1人の負担が大きく離職率の多い業界は医療だけではない。スマートデバイスがすべてを解決するとは限らないが、ほんの少しでも働く人の負担を減らすことができるのは言うまでもないだろう。iOSかWindowsか、デバイスは何を選ぶか、悩み二の足を踏む企業も多いが、ケアプロのように柔軟にクラウドを活用しiPhone + choromebookといった自社に合う選択をすることで、従来のフローを最大限活かすことができるのだ。ぜひ、参考にしてみてほしい。

執筆者

矢口和則(エディトル所属の編集者)/Macの専門誌の編集に携わったのち、書籍やムックなどの制作に関わる。最近では、Webメディア向けの記事の執筆や編集といった仕事が多い。