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さまざまなアプリやサービスと組み合わせiPadを経営課題解決に活かす千葉産業(前編)【case study】

iPadを導入している企業は年々増えているが、ここまでアプリやサービスを組み合わせて活用している企業は少ないのではないだろうか。千葉産業は、従業員が25名という規模の会社だが、経営課題を明確にし、それを解決するためにスマートデバイスや各種サービスを有効に活用している。前編では、営業の差別化や業務の効率化についての取り組みについて聞いた。

自社が抱える経営課題にiPadを中心としたIT化で対応

千葉県市原市に本社を構える千葉産業株式会社。主に機械工具や資材などを販売する会社で、創業は1969年にさかのぼる。主な顧客は京葉地区のコンビナート関連企業などだ。千葉紀彦 代表取締役社長によれば長いつきあいのある取引先が多く「いつものアレ、持ってきてよ」といった注文も珍しくないとのこと。

01 京葉工業地帯とともに発展した千葉産業のWEBサイト。キャッチフレーズは「工事屋さんのデパート」

そんな顧客に支えられ、着実に成長を遂げてきた同社だが、千葉社長によれば、いくつかの経営課題を抱えていたという。

1つは営業スタッフの経験不足、知識不足です。実は世代交代が進んでいまして、ベテランの営業スタッフが減っているんですね。先ほど話したような『アレ持ってきて』に対応するのは、若手だと難しいのです」

千葉産業が扱う商品の種類は非常に多い。その数、実に20万点ほど。例えば“マスク”だけでも1000種類以上あるという。的確に注文に対応できるようになるには、通常は3年ぐらいの経験が必要だ。

「2年未満の従業員が増えてきていました。そういった経験不足の部分を埋めていくのが課題となっていました」

もう1つの課題は、営業スタイルの差別化だ。営業が使っていたツールといえば、工具などの総合カタログ、そして製品チラシといった紙のものがほとんど。同業他社が多い中、これでは差別化は難しい。経験値の少ない営業スタッフが多い状態では、なおさら早急な対策が求められる。

「これらの課題の解決策は、ITにあると考えました」

そう語る千葉社長。IT導入が遅れている現状を認識し、IT化推進に向けて大きく舵を取った。しかし、その際にボトルネックとなったのは、社員のITリテラシーだった。

「いきなりパソコンを導入するのは無理がありました。そこで考えたのがタブレットなんです。直感的な操作が可能ですし、手書きに近い入力もできる。ITに不慣れな社員でも、タブレットなら使いこなせるのではないか、ということです。いろいろと試してみて、iPadの導入に踏み切りました。IT化が進めば、伝票などのデジタル化が進むという目論見もありましたね」

Android端末やWindowsのタブレットも試したという千葉社長。しかし操作性、動作速度、セキュリティなどの面から、iPadを選んだという。

「現在社員が使っているのはiPad 2がメインで、Airが数名。すべてセルラーモデルです。やはり営業で外を回ることが多いので、セルラーモデルを選択しました」

02 代表取締役社長の千葉紀彦氏。IT化のメリットを日々実感しているという

経験の少ない営業スタッフをiPadでサポート

それでは、営業スタッフのサポートをどのように行っているかを見ていこう。千葉産業ではまず、販売データの管理に「FileMaker」を導入した。本社ではパソコンで「FileMaker Pro」を、そして営業スタッフはiPadで「FileMaker Go」を活用している。

「お客様からの『アレを持ってきて』に対応するには、受注履歴の管理が重要です。従来は本社のパソコンで行っていたんですが、それだとデータの入力や確認のために会社に戻る必要がありました。その点iPadとFileMakerを組み合わせれば、営業スタッフが簡単に受注履歴の管理ができます」

03 FileMakerのデータベース。入力は営業スタッフと事務スタッフが分担して行っている

千葉社長によれば、FileMakerによるデータベースにより顧客のニーズにすばやく応えることができるようになったという。またこれ以外にも千葉産業では、営業支援システム(SFA)として、グループウェア「NIコラボ スマート」を導入している。

「主にスケジュール管理などに、このソフトを使っています。パソコンだけでなく、iPadからもアクセスできるのが便利ですね。あとNIコラボ スマートを利用すると、地図上に顧客先の位置をピンで表示することができます。営業スタッフは、この地図をiPadで見ながら移動できるわけです」

以前は新人の営業が入社すると、まず配送用のトラックの助手席に乗って顧客先を回り、同時に自分で場所を地図に書いて場所を覚えていたという。いまではiPadでひと目で把握できるようになった。

04 顧客の情報が人目把握できるグループウェア、NIコラボ スマートを活用

どの顧客が誰の担当なのか、といったこともすぐにわかります。経験が浅い営業スタッフでも、iPadなどのスマートデバイスの力によって、効率的な営業活動ができるというわけです」

営業スタイルの差別化には「seap」を活用

同業社が多い市場で、営業の差別化は重要な要素となる。千葉産業の選んだ“武器”は「seap」だった。

seapとは株式会社ジェナが開発、提供しているスマートデバイスの活用プラットフォームだ。ユーザーは、WEBブラウザからアクセスできるCMSを利用して、あらかじめ用意されている汎用的なテンプレートに画像やテキストをドラッグ&ドロップ。するとiOSやWindowsデバイス向けのアプリを簡単に作成できる。

独自のツールやカタログのアプリを、低価格かつ容易に作成することができます。iPadに製品の情報を表示させて、お客様にプレゼンするという使い方ですね」

seapを導入したきっかけは、Apple Consutantas Network主催のに参加したことだったそうだ。第一印象は「これは仕事に使えるな」だったと千葉社長は話す。顧客のところに紙のチラシを持っていってもほかの書類に紛れ込んでしまい、そのままになってしまうこともあるという。その点、見栄えのするデジタルカタログなら、興味を持ってくれる人が多い。

05 seapで作成した千葉産業オリジナルのデジタルカタログ。営業の差別化に威力を発揮する

またseapには、静止画だけではなく動画を取り込むことも可能だ。千葉産業では動画を使った営業ツールにも、積極的に取り込んでいる。そのために、テレビ番組などの制作会社に務めていた経験のあるスタッフを新たに採用したほどだ。

テレビ番組風の動画を作成し、カタログに盛り込んでいるんです。工具メーカーの方にも協力してもらって商品を紹介する動画で、千葉産業のセレクション=“チバセレ”という番組名にしています。長さもそれほど長くなく、お客様に気軽に見てもらえる内容になっています」

千葉社長もキャラクターとして登場するという、この“チバセレ”。顧客の反応も上々とのことだ。動画になっているということで、興味津々で見てくれる人も増えた。

「『社長のキャラはいらないんじゃない?』といった意見もありましたが(笑)、好評ですね。とにかく、コミュニケーションのきっかけになります。協力していただいている工具メーカーの方にも評判がよく、特価で商品を提供していただきました」

iPadとseapの組み合わせは、営業の差別化以外に、経験不足の営業スタッフのサポートという意味でも役立っているようだ。

「とにかくiPadをお客さんの前で開いて、話を聞いてもらうところまで営業マンを育てれば、後はiPadが効果的な営業をしてくれるというわけです」

千葉産業のように昔から付き合いのあるお客さまを抱える企業は多い。しかしながら、今まで培ってきた信頼から生まれる「あ・うん」の呼吸は、若手社員にはなかなかハードルが高いのが実情だ。なんとなく掴めてきたころに会社を辞めてしまうことも多いだろう。デジタルの力を活用し、「あ・うん」の呼吸を可視化することで、若手の育成速度を上げることが企業力を上げることにも繋がるはずだ。後編では、社員たちがどのようにしてスマートデバイスへの理解を深めているのか詳しく聞いた。

執筆者

矢口和則(エディトル所属の編集者)/Macの専門誌の編集に携わったのち、書籍やムックなどの制作に関わる。最近では、Webメディア向けの記事の執筆や編集といった仕事が多い。