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社内講習会でITリテラシーの向上を目指す千葉産業(後編)【会員限定】

iPadを導入している企業は年々増えているが、ここまでアプリやサービスを組み合わせて活用している企業は少ないのではないだろうか。千葉産業は、従業員が25名という規模の会社だが、経営課題を明確にし、それを解決するためにスマートデバイスや各種サービスを有効に活用している。後編では、社員のITリテラシーを高めるさまざまな施策について話を聞いた。

ITを使ったコミュニケーションとセキュリティにも注力

iPadなどのITデバイスが活躍する場面は、営業関連だけではない。社内でのコミュニケーションにも大いに活用している。複数のサービスを使い分けていると千葉社長は語る。

「社内の連絡網としては、『ChatWork』というビジネス用のチャットツールを導入してます。グループを作って情報をやり取りするなど、主に会議室的な使い方ですね。やり取りを全員で共有できるので、効率化に役立っています」

ChatWorkはスマートデバイスでも利用でき、テキストチャットだけではなく動画でのやり取りもサポートしている。従って、例えば新入社員が営業先に行ったときに不明な点があれば、動画で先輩社員のアドバイスを受けることも可能だ。またビジネス用ということで高いセキュリティ機能を備えている点も、千葉社長は評価している。

「使い始めてみると、部署間のやり取りでも効率化を実感しています。弊社の場合、営業部門と経理部門が別々のフロアなんですが、数字の確認などで頻繁に行ったり来たりする必要がありました。現在ではChatWorkで確認を行っているので、業務が非常にスムーズです。営業スタッフが外出しているときでも、iPadを使ってコミュニケーションができるので助かっています。社外秘のデータを扱うことになりますが、セキュリティがしっかりしているから安心ですね」

07 ChatWorkを利用することで、仕事のスピードアップが実現したという

ChatWorkに限らず、情報のセキュリティを重要視しているという千葉産業。実は同社では、将来的にECサイトを立ち上げる計画があるそうだ。そうなると個人情報の管理は避けては通れない課題となる。セキュリティへの注力は、先を見越しての対策と言えよう。

「弊社ではGmailも使っているんですが、『Active! gate SS』という管理システムも併せて導入しています。特に添付書類がある場合は、内容を私がチェックしてから送信するというルールにしています」

少々厳しい感じもするが、送信の間違いや書類の添付ミスなどは、同社だけではなく顧客にも迷惑をかけてしまう恐れがある、という考えだ。さらに千葉社長によると社内のパソコンの管理には「SKYSEA Client View」を利用しているという。情報漏洩への対策は非常に徹底している。

『SKYSEA Client View』を使うと、例えば社内のパソコンでTwitterが起動されたといったこともチェックできます。USBメモリーによる情報の出し入れも制限可能です」

一方、iPadなどのスマートデバイスの管理には「CLOMO」を利用。端末の紛失時の対策やウェブサービスを利用する際のチェック、そしてアプリの管理なども抜かりはない。

08 GmailのActive! gate SSを併用することで、誤送信や添付書類の間違いといったリスクを回避している

ITリテラシーを高めるために社内講習会を実施

iPadを初めとするITデバイスの業務活用に非常に積極的な千葉産業。しかし社員のITリテラシーが低かったことは、最初に述べたとおり。果たして、どのようにして社員のスキルを上げていったのだろうか?

iPadを社員に使いこなしてもらうために千葉社長が考えたのは、とにかく毎日iPadに触れてもらおうということだった。例えば朝礼などでもiPadを使うほか、社内連絡や情報共有もiPadで行うようにした。

「iPadは自宅に持ち帰って使用することも許可しています。家でもITに触れていてほしい、という思いからですね。さらに子どもがいる社員には、いまや子どもがITを活用するのが普通の時代なので、親もITを理解する必要がある、といったことも話していますね」

さらに千葉産業でユニークなのは、社内講習会を毎週行っているということだ。講師はITに詳しい社員が務めている。

09 テーマに工夫を凝らした社内講習会は、毎週行っている

「講習会ではさまざまなテーマを設けて、タブレットの楽しさを知ってもらい、抵抗をなくしていこうと工夫しています。一方で理解度を確認する試験も行っています。最近になってようやく、全員が業務にiPadを活用できるようになったと思います」

iPadで使うアプリとして、講習会ではアップルのプレゼンテーションアプリのkeynoteも取り上げた。最近では営業スタッフが、自ら必要に応じてKeynoteを使ってプレゼンテーション資料を作成するという。

「ITリテラシーが飛躍的に高くなった顕著な例ですね。また、最初のころは『PDFって何ですか?』というレベルだった社員が、今ではメールでPDFで図面を送るようお客様に依頼したりするようになっています。これはすばらしいことですよ」

ECサイトの立ち上げをはじめさらに新しいことに挑戦し続ける

「機械工具の市場でも、ネット販売の存在感が増しています。オンラインストアで購入するお客様も多いんですよ」

そういった状況を受け千葉産業では、前述のようにECサイトの立ち上げ、そしてWebサイトを使っての情報発信を準備中だ。

「機械工具などのECサイトに関しては、だいぶ準備が進んでいます。1つのジャンルの商品を比較検討できるサイトにする予定です。商品選びの手助けをするというのは、ITを導入する以前から弊社が培ってきたノウハウなので、それを生かそうと考えています」

このECサイトが本格的にスタートすれば、地元の千葉だけではなく、日本全国が営業エリアになる可能性も大いにあるだろう。千葉産業ではさらに、従来の顧客の枠組みを広げる試みも始めている。

「もう1つ準備しているのは、DIY市場向けに情報を発信するWebサイトです。こちらは法人ではなく、コンシューマーに向けた事業になります。つまり個人の方が使う工具などを紹介し、場合によっては販売するというWebサイトですね」

工場やコンビナート向けの工具の販売とはフィールドが異なる印象だが、こちらもツールに関する従来のノウハウを生かしたものだという。またこういった試みを実現できたのも、実はiPadの導入と業務のIT化を実現できたからだと千葉氏は話す。

新規事業を手がける、場合によっては私が本社を離れて打ち合わせなどを行う。こういったことができるのも、もちろんIT化のおかげですね。効率化が進んだことに加え、どこにいても会社にいるように仕事ができる環境が整ったからです」

かなりの速度でスマートデバイスの導入と業務のIT化を進めている千葉産業。しかし、まだまだスピードが足りないと千葉社長は考えている。

「足りないのはデータのやり取りのスピードではなく、“成果”を上げるスピードです。業務の効率化、そして業績の向上に、さらにITを結びつけていきたいと考えています。まだまだ不満があります。社員のみんなにも、もっと活用してほしいですね」

さらにスマートデバイスやIT導入の効果は、意外なところにも現れているという。

「ITへの取り組みは、弊社のWebサイトでも紹介しているんですが、実はその影響もあってか、人材募集への応募が最近増えています。興味を持ってくれる学生の方が、千葉産業への就職を考えてくれるようになったのではないかと考えています」

10 本社の入り口にあるiPadには、seapで作成した業務案内アプリをいれてある。デジタルサイネージ的な利用方法だ

千葉産業のITへの取り組みはこれからさらに加速していくだろう。社員からも「こうしたらいいのではないか」とアイデアが飛び交うこともあるかもしれない。しかし、千葉産業がここまでITの力を使いこなしているのは「今まで培ってきたノウハウ」をきちんとデジタルに落とし込み、使う社員のレベルに合わせて教育してきたからだ。そのツールを使う目的を明確にしてから、使ってみる。だからこそ、成果がでるのだ。

執筆者

矢口和則(エディトル所属の編集者)/Macの専門誌の編集に携わったのち、書籍やムックなどの制作に関わる。最近では、Webメディア向けの記事の執筆や編集といった仕事が多い。