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どの先生でも使えるICT活用を目指して 〜山江村立山田小学校 ICT活用事例(前編)〜【case study】

熊本県の山間部に位置する山江村立山田小学校。平成23年度から教育の情報化を本格的に始めた同校は、教育現場におけるICT定着を目指して、当初から10年間のICT研究期間を設定して取り組みを進める。その結果、同校のICT活用は授業改善や学力成果につながり、2015年、日本教育工学協会(JAET)主催の「学校情報化認定」において“学校情報化先進校”に選定され、一般社団法人 日本教育情報化振興会主催「ICT夢コンテスト」では総務大臣賞を受賞した。山田小学校ではどのようにICT活用を進めていったのか。同校の藤本誠一校長に話を聞いた。

 

なにもないところからスタートした山田小学校のICT活用

熊本県南部にある山江村は、村の総面積の90%を山林が占める農山村。そんな山間に、全国的にも先進的ICT実践校として知られる学校がある。山江村立山田小学校(以下、山田小学校)だ。2015年、山田小学校の取り組みは日本教育工学協会(JAET)主催の「学校情報化認定」において、教科指導におけるICT活用の部門で“学校情報化先進校”に表彰された。授業改善、学力向上にICTが活かされていると高い評価を得たのだ。

山田小学校がICT導入をスタートしたのは平成23年度。文部科学省から「ICT教育活用好事例」調査研究事業の委託を受けたことがきっかけだ。当時、同校に赴任したばかりの藤本誠一校長は、「それまでICTの取り組みをしたこがなくICT機器もなかったが、子どもたちの将来にとって良いことだと判断してスタートした」と当時を振り返る。その後、山田小学校に電子黒板が3台導入された。今でこそ、タブレットの導入が主流だが、当時はまだ電子黒板の利用がメインであった。

藤本校長は、ICT導入は文部科学省の委託事業がきっかけであったものの、いずれ教育機関ではICTを使うことが当たり前になると考え、教育現場におけるICT定着を目指して10年間のICT研究期間を設定した。一過性の取り組みで終わらないように村にも支援体制を求め、平成24年度に山江村はICT導入検討委員会を立ち上げる。その原動力になったのは、電子黒板の活用を通して、子どもの学習意欲が向上したことを実感したから。

「子どもたちの変化した様子を研究発表会で地域や保護者の方に公開して、教育現場におけるICT活用への理解を生んだ」

このような働きかけが、村がICT化を支援する動きにつながった。

熊本県山江村立山田小学校 藤本誠一校長

段階的に進めたICT環境整備

平成23年度に電子黒板3台からスタートした山田小学校。その後、村の予算で段階的にICT環境整備を進めていく。

平成24年度には電子黒板を7台追加し、すべての普通教室に完備した。また、校内の無線LAN環境も整備してWindowsのタブレットPC(東芝製)を20台導入。一斉授業だけでなく、個人思考の場面でもICTが有効だとし活用範囲を広げる。指導者用デジタル教科書を中心に教育コンテンツも整備し、「学習探検ナビ」(ベネッセコーポレーション製)や「キューブきっず」(スズキ教育ソフト製)の利用を開始する。

平成25年度は、タブレットPC120台を追加で導入し、4年生以上のすべての児童に対し、1人1台環境を整備した。「コラボノート for School」(ジェイアール四国コミュニケーションウェア製)や「eライブラリ」(ラインズ製)などの教育コンテンツも導入し、教材研究を広げる。

平成26年度は、6年生を対象にiPad Air(Apple製)を40台導入した。山江村の中学校では、iPadとPCの両方を活用するためだ。新たな教育コンテンツとして「SKYMENU」(Sky製)や「小学館デジタルドリルシステムfor School」(ラインズ製)を導入し、1人1台環境が活かせる教材研究を進める。平成27年度には新たにタブレットPCを40台導入し、全学年で1人1台環境が完備された。

また、山江村ではICT支援員を村の職員として採用した。山田小学校では以前、業者に委託してICT支援員を確保していたが、週に1度しか来校しないため課題解決が遅れる。そのため山江村では、村のすべての小中学校が手厚いICT支援を受けられるように専門の人材を設けた。

ICT導入の成功ポイントは、電子黒板からタブレットへ発展したこと

山田小学校は段階的にICT導入を進めた。藤本校長は結果として「最初に電子黒板だけを導入したことが、のちにICT活用を上手く進める秘訣になったと考える」と分析する。近年、電子黒板とタブレットを同時に導入する教育機関が増えているが、この形で機器が導入されると、教員は授業でどのように使うのかイメージを持ちづらいというのだ。ゆえに苦手意識を持ってしまいかねない。

山田小学校では、ICT導入初年度に電子黒板だけを活用したので、電子黒板のメリットやデメリットを教員が実感することができた。このことは教員たちがICTを活用するインセンティブにつながった。電子黒板は拡大機能で大きく資料を提示したり、動きのあるコンテンツを手軽に見せることがメリットだ。子どもの興味・関心を高める効果も感じることができる。しかし、児童の思考を深める場面では、手元にタブレットがある方が多様な学びができる。タブレットに書いたものを瞬時に比較・検討したり、さまざまな資料を見せたりしながら根拠のある説明を子どもたちが人前でできる。そのような気づきやイメージを持ったうえでタブレット導入に踏み切ったことが、のちの取り組みをスムーズに進めるきっかけになったというのだ。

最初は確かに、電子黒板の使い方を覚えたり、慣れる必要もあった。しかし、その後はICTのメリットも実感できていたので、授業改善のためにICTをツールとしてどう活かすべきかを教員たちは考えることができた。山田小学校ではタブレットもその延長線上で活用イメージを持つことができ、導入のハードルを下げたといえる。後半では、山田小学校がICT活用の効果を出すまでに至った取り組みを掘り下げる。

初出:DIS教育ICTソリューション 

AUTHOR

神谷加代/フリーランス・ライター。2010年にアメリカから帰国後、ブロガー&ライターとして活動を開始。主婦向けにタブレットの活用方法を綴ったブログなどで情報発信を行う。2012年に教育関係者向けの書籍『iPad教育活用 7つの秘訣』を執筆。以後、Webメディアを中心に教育IT関係、キッズプログラミングの分野を多く取材。教育IT系のコンテンツ制作やプロモーションなどにも携わる。