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先生の引き出しが増える、東京書籍の“新しい”デジタル教科書【topics】

紙の教科書とは異なり、映像や音声などのリッチコンテンツが多く盛り込まれたデジタル教科書。文部科学省が平成27年10月に発表したデジタル教科書の整備状況データによると、全国39.4%の教育機関でデジタル教科書の導入が進んでいるという。そんなデジタル教科書の分野において、充実した製品ラインアップと豊富なコンテンツで業界を牽引するのが東京書籍だ。全国の教育機関でICT活用が進む中、デジタル教科書はどのように授業で使われて効果が表れているのか。東京書籍株式会社 ICT事業本部 営業部長の川瀬徹氏に話を聞いた。

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指導者用・学習者用の「デジタル教科書」に加えて、「学習者用デジタル教材」も用意

東京書籍におけるデジタル教科書のラインナップは、大きく分けて下記3種類の製品に分かれる。

①指導者用デジタル教科書(小中)
②学習者用デジタル教材(小中のみ、中学校は平成28年3月25日発売予定)
③学習者用デジタル教科書(高校のみ)

小中学校では指導者用デジタル教科書と学習者用デジタル教材のみ、また高校においては学習者用のデジタル教科書のみなど、現時点では校種によって製品ラインアップは異なるものの、東京書籍ではこの3種類を軸に製品化を進めている。

東京書籍のデジタル教科書で特徴的なことは、これら全3種類の製品において、主要教科を中心としたほぼ全部の教科(一部、音楽や図工はなし)のコンテンツを用意していることだ。小学校は7教科37タイトル、中学校7教科18タイトル、高校7教科30タイトルなど、多くの教科でデジタル化を進めている。東京書籍株式会社 ICT事業本部 営業部長の川瀬徹氏は、「小学校から高校まで、国語や算数などの主要教科を中心に、ほぼ全教科でコンテンツを揃えることができたのは東京書籍の強みだ」と語る。

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東京書籍株式会社 ICT事業本部 営業部長 川瀬徹氏
“見せること”にこだわった指導者用デジタル教科書

教育機関ではICT整備の第一歩として、電子黒板やプロジェクターなどの大型スクリーンが配備されることが多い。これは、カラーの資料やアニメーションを使った解説動画、拡大表示など、見せる手段がICTで増えれば、児童生徒がイメージで理解しやすいからだ。東京書籍の指導者用デジタル教科書においても、“見せる”にこだわった機能がある。

●360度のパノラマ写真・動画で、リアルが実感できることを重視
小学4年生の理科では、360度のパノラマカメラで撮影した写真や動画コンテンツを取り入れた。例えば、夏の夜空を360度のパノラマカメラで動画撮影し、プラネタリウムにいるような視点で星の観察ができる。紙の教科書では、東の空、西の空という具合に写真を見比べるだけだが、実際の天空はつながっている。動画では天空を横にスワイプしながら、東西南北の星の動きをリアルに見ることができる。

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●複数動画を比較・検討できる機能を搭載
理科デジタル教科書の標準機能として複数動画を同時再生し、比較・検討できる機能を設けた。例えば、5年生の理科「流れる水のはたらき」の単元では、上流・中流・下流の水の流れ方を動画で比較・検討できる。さらには、教員が撮影した動画を取り込んで再生することも可能。「地元の川と長良川の川の流れを比べてみよう」といった活用ができる。

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●問題専用ページへジャンプ、より多くの問題を表示。
紙の教科書では掲載できる問題数に限りがあるが、デジタル教科書は表示スペースに制約がない。このメリットを生かして、算数では計算問題のボタンをクリックすれば、問題専用ページへジャンプし、より多くの問題が出題される仕組みを採用した。さらには計算問題の数値も乱数で自動的に変更することが可能だという。

●アップローダーの機能で、リアルな素材を地域学習に生かす
アップローダーは、教師が撮影した写真や動画をアップできる機能。例えば、教師が住む地域の桜を写真に撮ってアップすれば、同じデジタル教科書を使用している全国の教師が、その写真を見ることができる。アップした写真は日本地図に分布され、地域ごとの桜の写真を見比べることも可能だ。

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川瀬氏は「今後は、先生もデジタル教科書づくりに参加してほしい。全国各地のお祭りの写真や地域の自然の様子を写真に撮って、共有してもらえれば地域学習に活かせると考えている」と語る。

●特別支援からユニバーサルデザインへ
東京書籍では、指導者用デジタル教科書においては教科書バリアフリー法(2016年春)の施行に合わせて、全ての児童生徒が同じ環境で学習できることを目指したユニバーサルデザインを採用した。これまでの総ルビ、分かち書き、文節改行の他、白黒反転表示、拡大時の自動改行、音声読み上げなどの機能を盛り込んだEPUB3対応学習者用データを提供している。

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児童生徒が使う「学習者用デジタル教材」は試行錯誤に重点

「学習者用デジタル教材」は、児童生徒がタブレット端末で使用するデジタル教材。教科書の紙面はないが、個別学習用のドリル教材や興味・関心を引き出すための映像コンテンツが集約されている。なかでも、注目したいのは、トライ&エラーが何度もできるITのメリットを活かした教材が用意されているところ。例えば、算数の図形の問題では、生徒がタブレット上で図形を切ったり、回転させたりと自由に動かしながら試行錯誤ができる。

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学習者用デジタル教材については、今までは指導者用デジタル教科書の購入者に対して販売されていたが、現在は、指導者用デジタル教科書の購入の有無や紙の教科書の採択エリアに関わらず、教員であれば自由に購入することが可能だ。川瀬氏は「タブレットを導入したはいいけど、何かいい教材はないかなという時に使ってほしい」と語る。東京書籍では、学習者用デジタル教材についてサンプル体験も用意している。

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東京書籍が初めて!高校の「学習者用デジタル教科書」

東京書籍は業界初となる「学習者用デジタル教科書」も製品化している。高等学校が対象だが、Windows版、iPad版の両方をリリースしている。

学習者用デジタル教科書の特徴は、デジタル教科書でありながら、生徒が自分で学習する際に必要な機能やコンテンツを揃えていること。教科書紙面のほか、辞書、問題集、ドリルなどのデジタル教材を使った学習が可能だ。また、5段階調整が可能な自動音読機能や、手書きとキーボードに対応したノート、フラッシュカードの機能なども搭載。英語においては、通信機能を使って教師と生徒が課題のやり取りもできるなど、今後、教育機関で進む1人1台のタブレット環境を見据えたデジタル教材が用意されている。

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さまざまな機能やコンテンツが搭載されたデジタル教科書。これらを授業で用いた時の効果は何か。

川瀬氏は「デジタル教科書の一番の効果は、教師が説明しづらいところも図や資料などイメージを用いて説明できるところだ」と語る。教科書の挿絵を拡大表示して説明したり、内容の理解、定着を図るために動画教材を見たりするなど、イメージを用いて説明ができるため児童生徒の視線が集まりやすいというのだ。逆に、児童生徒から見ても、イメージを用いて自分の意見を述べやすい。これにより、「話し合いが活発になる」「授業の進行もスムーズになる」と話す教員もいる。

また、デジタル教科書を活用している教員の多くが「授業を組み立てる引き出しが増えた」「指導手段が増えた」と手応えを話しているのにも注目したい。デジタル教科書内のコンテンツを用いてオリジナル教材を作成したり、振り返り動画を使った知識の定着、シミュレーション教材を課題解決型の学習に生かすなど、新しい指導方法をデジタル教科書の活用から見出す教師もいる。

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東京書籍がリリースしたアプリ「教科書AR」。アプリを起動し、教科書にかざすと数学であれば図形などが3Dで映し出される。

AOUTHOR/神谷 加代

初出:DIS教育ICTソリューション