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「製造現場でのモバイル機器活用が業務改革への第一歩」 セミナーレポート【topics】

一般社団法人iOSコンソーシアムが、ビジネスセミナー「製造現場からはじめるiPad を活用した業務改革セミナー 第2回」を名古屋・大阪・東京の各会場にて開催した。今回は2月19日に行われた東京でのセミナーをレポートする。

 

モバイル機器導入の成功・失敗とは

製造業を中心としたiOSデバイスの活用・導入を検討している法人企業の各部門を対象に開催された「製造現場からはじめるiPad を活用した業務改革セミナー 第2回」は、iOSコンソーシアム製造ワーキンググループの基調講演と、2つの活用事例講演、さらに6つのセッションが用意されたグループ座談会というプログラムで進行した。

iOSコンソーシアム 代表理事 加藤正樹氏による開会挨拶に続き、壇上にあがったのはiOSコンソーシアム 製造ワーキンググループの講師である千葉友範氏だ。

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iOSコンソーシアム 代表理事 加藤正樹氏。

 

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iOSコンソーシアム 製造ワーキンググループ 講師 千葉友範氏。

 

基調講演は「ズバリ!丸わかり エンタープライズモバイル導入の傾向と現状 ~導入の「落とし穴!」をお教えします~」と題し、iOSコンソーシアムの製造ワーキンググループが議論を重ねてきた内容が発表された。

「スマートデバイスにおける出荷台数の予測」(出所:タブレット端末利用動向調査報告書2013)から、法人向けモバイル機器(主にタブレット)市場は急成長していくと予測されると語った千葉氏は、20%程度の先進的な企業がタブレット導入を経験していると言う。注目したいのは、接客用途、決済用途、教育現場など、現場でのスマートフォン・タブレットの利用が増えてきたことだ。例えば、高速道路の保守・点検業務は、これまで目視での点検が中心で作業効率が悪かったが、今はiPhone/iPad上のアプリを使うことで、写真を撮って送信するだけで老朽化の具合の判別や、GPSで点検場所も容易に判別できるようになっているという。このように、従来のPCを活用できなかった現場で大幅な業務効率の改善効果が見られる事例もあるが、モバイル機器の導入にはいまだ問題点も多いと千葉氏は語る。

モバイル機器の出荷台数は順調に増えているのだが、「稼働率」(実際に利用されている比率)は逆に下がっている。モバイル機器を導入した企業の6割程度は導入効果に満足しているが、3割は効果があったかどうかもわからないというのだ。

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スマートフォンやタブレットの導入は順調に進むが、実際に利用されている「稼働率」は低下傾向にあると言う。

 

導入後にユーザー部門から寄せられるクレームには、

・紙との違いがわからない
・結局、PCと2台持ちになっている
・バッテリーの持ちが悪く、いざというときに使えない
・操作が面倒くさい/新しく覚えるのが面倒くさい
・ずっと仕事に追いかけられるようで嫌だ

などが多く、モバイル機器を現場で活用する際の問題点が浮かび上がってくる。また、導入するにあたって管理部門が解決すべき課題も、

・情報セキュリティが担保できないのではないか
・メンテナンス/サポートコストがかさむのではないか
・社外/時間外勤務ができる環境は人事規程の変更になる
・デバイスやOSはどう、選定すればいいのか
・導入をして本当に効果があるのか

と多岐にわたる。これらの問題点を解決せずに導入を進めた場合、肯定していた効果が得られず、デバイスも使われないという「導入失敗」に陥る可能性が高いと千葉氏は言う。

MustとCanの2段階で定義する

モバイル機器の導入に失敗しないためには、多岐にわたる検討が必要になる。特に重要なのはグランドデザインの設計であると千葉氏は語る。事業の方向性など各種戦略を踏まえ、中長期的な視野で実現すべき青写真を設計し、そのうえで実現までのロードマップを設計する。

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モバイル機器導入で重要なのはグランドデザインの設計とロードマップの策定。

 

利用者と推進者、経営者それぞれの視点から導入のメリットを明確にすることも重要だと言う。すべての機能を同時に導入するのではなく、利用者からのフィードバックを反映させながら段階的に導入する。そのためには、機能を「Must(しなければならないこと)」と「Can(できること)」の2つに定義し、「Must」はセキュリティや顧客に直接関係することなどに絞ってスタート。現場の声を収集して「Can」も広げていく。このように「小さく導入して大きく育てる」ことが成功につながると千葉氏は言う。

また、リテラシーも含む利用者のトレーニングや、モバイル機器による新たなワークスタイルを実現するための人事制度や評価制度の見直しも必要になってくる。千葉氏はモバイル機器の導入は「企業変革のはじめの一歩」となると語った。

大きな導入効果が得られた成功事例

基調講演に続いては、2つの活用事例講演が行われた。最初に登壇したのは株式会社ケイ・ウノの相庭 聡氏。オーダーメイドのジュエリーをはじめ、時計やスーツなどのアパレル製品の受注・製造・販売を行っているケイ・ウノでは、iPadを導入して生産管理システムの変革を実現したという。

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株式会社ケイ・ウノ 製造部 生産管理課長 相庭 聡氏。

 

これまでは販売店舗で受注した内容を紙の指示書に記載し、その指示書と必要部材を製造工場に送り、仕様や納期を確認してスケジューリング。そこから各工程の加工作業が行われるという流れだった。この方法では、指示書一式が各工程の加工者にバトンリレーのように回され、リアルタイムでの情報把握ができないなど、さまざまな問題があった。ケイ・ウノは、この生産管理方法をiPadの導入で一新。紙の指示書を電子データに置き換えることで、情報更新の時間短縮をはじめ、リアルタイムの情報把握、部材管理のコストダウン、品質向上などの効果が得られたと言う。

iPadを導入して気づいた点として、相庭氏は「Wi-Fi環境の整備が必須」「浸透させるのは時間をかけてゆっくりと」「ユーザビリティーが重要」といったことを挙げた。また、新たな生産管理システムのユーザビリティー改善の開発を担当した株式会社アイセルは、開発と評価を短期間に繰り返すことにより、現場の利用者が使いやすいシステムを構築したと語った。

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加工現場にiPadが導入された。導入後半年近くは以前の紙のシステムのほうがいいという意見も多かったと言う。

 

2つ目の活用事例講演では、積水成型工業株式会社の澤田篤伸氏が登壇。積水化学グループ関連会社の改善コンテストで銀賞を受賞した製造日報の電子化について講演した。

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積水成型工業株式会社 CSR部 情報管理グループ 主任 澤田篤伸氏

 

製造現場において、紙とPC上のエクセルファイルで管理していた製造日報を、作業効率の向上を図り電子化に着手。システムの構築には、社内開発+電子帳票ソリューション「i-Reporter」の利用というハイブリッド方式で行った。

その結果、日報集約・製造資料作成に従来300時間/月かかっていたものが170時間/月へと、60%の削減を達成したと澤田氏は語った。さらに、製造資料作成者の当業務に関する残業ゼロ化達成や、日報の製品コード、成形日、号機の書き間違いゼロ達成など、有形無形の効果が確認できたと言う。

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製造日報の電子化により、有形・無形含め数多くの効果が確認できたと言う。

 

モバイル機器導入・活用の担当者に悩みは尽きない 

活用事例講演が終わると、6セッションが用意されたグループ座談会が行われた。各セッションでは講師と参加者が活発なディスカッションを行い、盛況のうちにセミナーは閉会となった。

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グループ座談会では、講師と参加者による活発なディスカッションが行われた。

 

本セミナー参加者へのアンケート結果によると、半数以上の参加者がモバイル機器をすでに導入済みとのことだった。利用中、または導入予定のモバイル機器というアンケートでは、当然ながらiPad/iPhoneが1位2位を占めたが、Windowsタブレットの利用率も大幅に増えていたことは注目に値するだろう。

また、今回のセミナーに対しての満足度は、基調講演、活用事例ともに高く、グループ座談会に関しては満足度100%を達成している。今回の参加者はiOSデバイスの活用・導入を検討している法人企業の各部門に所属する方々だが、やはりモバイル機器の導入、活用に関する問題や悩みは多いようだ。

 

執筆者

佐武洋介(GMBA編集部)/20年間PC雑誌・書籍の編集に携わり、GMBA編集部に参加。モバイル機器はスマートフォン2台とタブレット6台を所有している。