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法人需要を狙い国内投入準備が進むWindows Phone、存在感を高められるか【news topics】

Photo:ND0_4287 - Caledos Runner on Lumia 820 by N i c o l a CC BY

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ニュースサイトや新聞等等を日常的に確認していれば、モバイル機器のビジネス/教育/医療用途での活用に関わるニュースは、毎日のように目に入ってくるはずだ。本連載では、国内の最新モバイルビジネス関連ニュースから、見逃せない情報をピックアップして解説していく。

Windows Phoneの国内投入報道が相次ぐ

現在、国内におけるスマートフォンのプラットフォームといえば、iPhoneに代表されるアップルの「iOS」と、多くのスマートフォンが採用しているグーグルの「Android」がよく知られている。だが海外に目を移すと、他にも多くのスマートフォン向けプラットフォームが提供されており、“第三極”ともいえるグループを形成している。

そうした第三極のひとつとなっているのが、マイクロソフトの「Windows Phone」だ。日本では、auが2011年に「IS12T」という東芝製のWindows Phone端末を市場に投入したことがあるものの、その後現在に至るまで、国内向けのWindows Phone端末が投入されることはなかった。

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2011年に国内投入された、auの東芝製Windows Phone「IS12T」。

 

その間、マイクロソフトは2014年4月にノキアの携帯電話事業を買収し、スマートフォン端末開発を手掛けるようになるなどさまざまな変化があったものの、Windows Phone端末の日本投入に関しては、まったくといっていいほど動きがない状況が続いていた。

しかし今年の2月、パソコンメーカーのマウスコンピューターと、「freetel」ブランドでSIMフリーのスマートフォンを提供しているプラスワン・マーケティング、そして高耐久性能を持つスマートフォンなどを世界展開している京セラが、相次いでWindows Phone 8.1を搭載した端末を開発していることを表明。マウスコンピュータープラスワン・マーケティングWindows Phoneスマートフォンを国内投入する方針も明確にしており、国内におけるWindows Phoneに関する動きが、急速に慌ただしくなってきている。

3月2日から5日までスペインで開催されていた、世界最大の携帯電話の見本市イベント「Mobile World Congress 2015」では、それら企業がブースでWindows Phoneを搭載したスマートフォンの開発中モデルを参考出展しており、Windows Phoneに積極的に取り組もうという様子を見て取ることができた。だが一方で、マイクロソフトは日本に向けたWindows Phoneに関する方針に関して大きな変化を見せておらず、端末メーカーとの温度差も感じられるのも事実だ。なぜ、マイクロソフトの日本向け方針が大きく変わらないにも関わらず、メーカー各社のWindows Phone展開が進もうとしているのだろうか。

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プラスワン・マーケティングがMobile World Congress 2015で展示していた開発中のWindows Phone端末。性能的にはミドルクラスになるとのこと。

 

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同じくMobile World Congress 2015の京セラブースにて展示されていたWindows Phoneの試作機。高耐久性を活かし法人需要開拓を目指すそうで、国内投入は未定という。

 

ハードウェア性能の制限緩和とSIMフリー市場の拡大

その大きな理由は、マイクロソフトが2014年に、Windows Phoneのライセンス方針を大きく変えたことにある。Windows Phoneは従来、Androidで顕著なハード性能のばらつきを懸念し、ハイエンド寄りの端末のみに開発を制限するべくハードウェア性能に多くの制約を設けてきたのだが、それを大幅に緩和し、ミドル・ローエンドクラスのAndroidスマートフォンと同等のハードでもWindows Phoneを開発できるようにした。さらにマイクロソフトはWindows Phoneのライセンスを、9インチ未満のWindowsタブレット同様無料とすることを決定。そうしたことから多くのメーカーにWindows Phone採用の門戸が開く形となり、それを受けて今回端末開発を表明したメーカーもライセンスの取得と端末開発に至ったのである。

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Windows Phoneの開発条件緩和を受け、TCLの「Pixi」のように1つのハードでAndroid、Firefox OS、そしてWindows Phoneと複数のOSに対応するデバイスも登場している。

 

そしてもうひとつ、大きな要因となっているのは、仮想移動体通信事業者(MVNO)の急増から、SIMフリー端末の市場が拡大しつつあることだ。今回、Windows Phoneの国内投入を表明している2社はいずれもキャリアへの端末納入実績はなく、Windows PhoneもSIMフリーでの投入と見られている。

国内では従来、キャリアを経由して端末を販売するのが一般的であり、端末を広く販売するにはキャリアとの関係構築が必須であった。マイクロソフトがWindows Phoneによる国内市場開拓に消極的なのも、アプリ数が少ないなどの理由からコンシューマー向け市場でWindows Phoneが支持を得られない可能性が高いと踏んで、キャリアが投入に消極的なことが影響していると考えられる。

だがSIMフリーの市場であれば、キャリア経由の販売と比べ数を大幅に増やすのは難しい一方で、オープンである分キャリアの影響を意識する必要がなく、好きなOSを採用した商品を販売できる。ライセンスと販売、両面での自由度が高まったことが、国内でのWindows Phoneスマートフォン再投入に向けた動きにつながったといえるだろう。

実はメーカー側にも、以前から国内向けにWindows Phoneを提供したいというニーズは少なからずあったようだ。今回Windows Phoneの開発を表明したメーカーが、いずれも法人向けを主体に端末を販売すると表明していることからもわかるように、社内のシステムをWindowsで構築している法人に向け、スマートフォンを販売しやすくなるというのがその大きな理由である。

Windows Phoneはマイクロソフトが開発しているOSであり、同じマイクロソフトが開発するWindowsとは非常に相性がよい。社内システムはWindowsだが、スマートフォンは別というように、社内に複数メーカーのOSが存在すると管理が複雑になり、トラブルが起きた際の対処も難しくなってしまうことがある。それゆえスマートフォンを導入するなら、マイクロソフトのOSで揃えたいと考える企業が多いのは確かであろう。

しかも法人向けであれば、マイクロソフトのアプリ、あるいは業務専用に開発したアプリさえあればよいので、コンシューマー市場で問題になるアプリの数を気にする必要もない。さらに先を見越すならば、WindowsとWindows Phoneの統合がより進められた「Windows 10」が登場予定であることから、社内の環境をマイクロソフトで統一したいというニーズは今後一層高まると見られる。

それだけに、今回の端末投入を機としてWindows Phoneを企業向けに販売する動きは加速すると見られ、それを採用する企業も増えていくと考えられる。そうした際に、国内でWindows Phoneに対し消極姿勢を貫いているマイクロソフトがどのような動きをするのかが、大いに注目されるところだ。

 

執筆者

佐野正弘/福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。