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モバイルが機能するコミュニティ(国連防災世界会議 パブリック・フォーラムレポート)【news topics】

世界各国が防災対策について話し合う第3回国連防災世界会議が3月14日〜18日に仙台で開かれた。東日本大震災から4年。復興過程にある中で、国連加盟のうち190カ国が登録・参加した世界会議では、過去最大規模となった。また、併せて仙台市内各所でパブリック・フォーラム(350以上のシンポジウム・セミナー、200以上の展示など)が期間中に開催され、日本をはじめ世界の防災に関する最新の課題や知見が集約し、よりよい都市づくりを官民一緒になって考え、共有する機会となった。本稿では、民間が主催した「安全で賑やかな自立巡回型地域社会を目指して」と題するパネルディスカッションの中から、特にGMBAと接点のあるモバイルトピックを中心にレポートする。

小泉進次郎政務官_冒頭挨拶

ステージを見てびっくりしました。これまでにも多くの登壇をしてまいりましたが、パンダやライオンがあるのも初めて(笑)、そしてさまざまな遊具もあります。遊具は、高齢者の方を含め、実は体を鍛えることにも一役買います。また、芝などのしつらえによって公園を演出したステージになっている。この発想こそが、行政や国が主催ではないフォーラムだといえます。このステージを一目見ただけで、この後の議論が楽しめ、私なりの経験や思いもお伝えできる機会になると期待しています。
今日のテーマを一言でいえば、コミュニティ。コミュニティを日本のさまざまな地域で、どうやってつくっていき、また再生していくことができるのか。私が今担当しているのは、1つは復興、もう1つは地方創世。この2つの大きなテーマで横串として共通しているのがコミュニティをどうするのか、です。今日は冒頭のご挨拶で、皆さんに対し、このコミュニティをどうやって一緒につくっていくのか、続けていくのかという投げかけをさせていただき、この後に続くゲストの皆さんのプレゼン、そしてパネルディスカッションにおいて、その問いを常に持ちながら、一緒に考えていきたいと思います。
なお、こういった場にありがちなのは、「いやー、いい話が聞けたなあ。パネルディスカッションの話もよかったなあ」と、そのときは思ったとしても、翌日の行動は何も変わっていない、、、そういう場ではなく、この機会がきっかけになって行動が変わった、と言われるような実のあるものにしたい。
その意味でまず、最初に皆さんに残したいストーリーがあります。先月、安部総理とともに気仙沼へ行った際のお話です。テレビでも放映されましたが、実は放映されていないところで、とても印象的な出来事がありました。
気仙沼で初めてできた災害公営住宅。よく言われる復興住宅です。震災後、仮設住宅にお住いになった方々が、新しくできた団地型の災害公営住宅に移り住むことができるようになった。その第1号である住宅に、安部総理、復興大臣、そして私を含めて訪れ、住民の皆さんと対話集会を行うことになった。車座での集会です。
司会を任された私は、どうやったら住民の皆さんに、参加してよかったと思ってもらえるかを考え、参加者全員にマイクをお渡しし、発言いただくことにしました。この機会だから、仮に厳しい声でも、被災地の皆さんの本音が総理に直接伝わる機会になればそれでいいという考えで行いました。
最後の1人がおばあちゃんでした。そのおばあちゃんが、印象に残る一言を話してくださったのです。「この仮設の生活は大変だった、辛かった。きつかった」と、そういった思いを総理におっしゃるのかなあと思ったら、そのおばあちゃんは私を含む(政府関係者)全員の想像をはるかに超えた一言をおっしゃったのです。
「仮設は、楽しかったです」
みんな絶句ですよ。え!? 仮設が楽しかった???
そして話を聞いてみると、
「仮設にはコミュニティがあった。隣の(生活する)音も聞こえた。誰が住んでいるのかもわかった。大変だったけれどみんなで助け合った。これから復興住宅で、こんなにきれいな建物を造っていただいたけど、顔が見えないような、そういったものではなくて、あの仮設のようなコミュニティができることを期待しているし、応援してください」と。
これは、これからのテーマですね。仮設住宅がなくなっていく。新しい家ができていく。さあ、その次のコミュニティをどう創っていくか。そして支援される側の方々が、ずっと支援される側ではなく、支援する側の一人ひとりとして、これからの地域を支えていく一人ひとりに、どうやったら意識の共有をしていくのか。
そして、あのキャラの強いリーダーがいるからあの地域はそれ(コミュニティ)ができるんだ、ではなくて、仕組みとして、地域でそういったことができるような問題意識を持ちながらの議論を今日できれば、こんなに素晴らしいことはないと思います。
基調講演_防災とコミュニティ

以上、小泉進次郎氏の冒頭挨拶は、朝7時半東京発の東北新幹線で仙台入りした私の目を覚まし、そして200人超の観衆を一気に引き込む歯切れのいい内容だった。

話は前後するが、このパブリック・フォーラム「安全で賑やかな自立巡回型地域社会を目指して」は、公共空間向けの家具や遊具、サインボードなどをつくる株式会社コトブキが主催したもので、まもなく創立100年を迎える同社が現在行っているプロジェクト「Park to the Future!みんなと考える公園のこれから」の一環という位置づけだ。

登壇者は小泉氏をはじめ、各界で活躍する5名とコトブキ社社長がスピーカーとして登場。コミュニティの在り方を議論する内容の濃いイベントになった。

 

基調講演の1人目として登場したのは、神戸市危機管理室長の長岡賢二氏。20年前の阪神淡路大地震発生直後のライフラインストップの様子から、これまでの復興の歩み、取り組み、そして新たな街づくりにおける防災力の強化が話された。特に地域コミュニティという観点では、神戸市内と震源地である淡路島とでは、ともにライフラインが停止した中において、地域住民のコミュニティ力がいかに生死の明暗を分けるものになったのか、という話が印象的だった。

基調講演の2人目にはSONYコンピュータサイエンス研究所ファウンダー・所眞理雄氏が登壇。災害リスクを減らした新たな社会の設計としてオープンシステムサイエンスを提唱している人物だ。天災について、「原理の解明はどんどん進んでいるし精度も高くなってきている一方で、実際の世界は変化しており、絶対安全というものは存在しない。長期的な効果費用の予測をし、公開、根拠提示、説明責任の明確化といった利害関係者との合意のプロセスをもって標準化を進める必要がある」と話す。

また、それにあたっては、「どこまで相手の気持ちになれるかが重要。コミュニティという考え方をベースに、継続的に変更したり改良したり直していく。お金の時間ではなく、人の時間で物事を考えていく。グローバル社会はまだ始まったばかりである」と、すでに稼働している実例を交えながら、希望と未来は継続から生まれることを示唆した。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、本フォーラムの主題である「安全で賑やかな自立循環型地域社会を目指して」、さまざまなヒト、モノ、コトにおける交流の在り方が話し合われた。登壇は小泉進次郎政務官、長岡賢二氏、所眞理雄氏に加え、佐賀県最高情報統括監・森本登志男氏、コトブキ代表・深澤幸郎氏、そしてモデレーターに経営ストラテジスト/随筆家の坂之上洋子氏を迎えて進められた。

中でも特筆は、自治体のモバイルIT推進で先駆的な佐賀県での取り組みだ。すでに救急医療におけるモバイルの利活用をはじめ、県職員へのシンクライアントとしてのモバイル機器活用など、これまでどうしても職員への負荷としてのしかかっていた「場所と時間」という制限を、見事モバイルITによって、本来職員が従事すべき業務に専念できるようマインドも仕組みもリセットさせた佐賀県。森本氏は数ある同県におけるモバイルITの利活用の中から、昨年6月にすでに1期の実証実験は終わっているものの、民生委員のタブレット活用事例を説明した。

高齢者世帯をはじめ、様々な障碍、経済的な問題、DV被害などなど、様々な困難を抱える方々を地域で見守る制度として民生委員制度。全国に23万人もの民生委員さんが、地域に密着して「無報酬」で日々地域の見守り活動をしているという。佐賀県ではこの民生委員の活動をタブレット型端末の導入で改善できないか?というテーマで実証事件を行った。賛同にはNTTドコモ、日本マイクロソフト、インテルなどが7者が顔を揃えた。

佐賀県における民生委員の平均年齢は67歳。そもそもIT機器の利用には慣れていない年代の方々22人に、約2カ月のトレーニングを経て実務に活用してもらったそうだ。結果的にはものすごく助けになり、これまで紙ベースだった日々の活動報告書・訪問時の書類がタブレットからの入力、閲覧に変わり、軽量化・時間短縮_個人情報管理の安全性向上につながったという。

特に注目すべき点は、民生委員間で「途中から仲間で教えあいが始まった。第1期検証後、22人が返すのが寂しいと語ったこと」という。ここに至るまでの関係者努力には、モバイルITの業務利用における大きなヒントが隠されているはずだ。単に配るだけでは現場は「負担」にしかならない。そうではなく、新しい機器を使うワクワク感、活動報告の見える化など、現場のモチベーションがやがてコミュニティにおける活性化にもつながり、それは年齢に関係のないものだという証明にもなる。

新しいコミュニティづくりもさることながら、今あるコミュニティの維持に、モバイル活用が継続的に行われることを期待したいし、そうあってほしいと願う。

第3回国連防災世界会議パブリック・フォーラム「防災3.0:安全で賑やかな自律循環型地域社会を目指して」

 

執筆者

小林正明(GMBA編集部 編集長)_雑誌編集に従事する傍ら、2010年以降はもっぱら関心事がモバイルに移り、教育、ビジネス、医療におけるモバイルの先端事例を追う中で、「日本のモバイルITは、本来届くべきところに届いていない」ことを痛切に実感。日本に残された最後のチャンスはモバイル革命だと信じ、GMBAに参画する。