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「モバイルフォーラム2015」に見る、IoTに向けたMVNOの可能性【topics】

 Photo:Network by Jun CC BY-SA

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ニュースサイトや新聞等等を日常的に確認していれば、モバイル機器のビジネス/教育/医療用途での活用に関わるニュースは、毎日のように目に入ってくるはずだ。本連載では、国内の最新モバイルビジネス関連ニュースから、見逃せない情報をピックアップして解説していく。第2回は注目度の高まる「MVNO」をフィーチャーする。

注目が集まる仮想移動体通信事業者(MVNO)

近年、大きな注目を集めている仮想移動体通信事業者(MVNO)。SIMフリースマートフォンとのセット販売による“格安スマホ”のヒットで、安価にスマートフォンを利用できるソリューションとして注目されているMVNOだが、今後MVNOのビジネスを考える上で重要視されているのが、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)に代表される、スマートフォン以外のデバイスに向けた利活用だ。

去る3月17日、総務省と一般社団法人のテレコムサービス協会MVNO委員会は、MVNOの将来に関して議論するイベント「モバイルフォーラム2015」を開催した。MVNOの推進役らが多く参加したこのイベントの中でも、現在高い注目を集めているコンシューマー向けだけでなく、IoTを中心としたビジネスでの利活用に向けたMVNOの可能性に関して、多くの議論がなされていた。

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3月17日に開催された「モバイルフォーラム2015」では、MVNOの今後に関するさまざまな議論がなされた。

 

今でこそMVNOといえばスマートフォン向けのネットワークを提供するイメージが強くなってきているが、データ通信が主体だったかつてのMVNOは、どちらかといえばB2B、B2B2C向けのサービス提供が主体だった。実際、日本通信の代表取締役副社長である福田尚久氏は、同社がMVNOのサービスを開始した当初から、プリントシール機向けにPHS回線を提供し、撮影した写真の画像をメールに添付して送る仕組みを用意するなど、機械間通信(M2M)に積極的に取り組んできたと話している。

昨年“格安スマホ”で大きな注目を集め、参入事業者も増えたMVNO。だが“格安”というイメージの定着や激しい価格競争など、競争激化によってコンシューマー向けビジネスは厳しさを増している。そこで現在MVNOに求められているのが、MVNOならではの新しい価値提案であり、なかでももっとも有力な取り組みと見られているのが、M2M、現在でいうところのIoTに向けたネットワーク提供だ。

三菱総合研究所の主席研究員である西角直樹氏は、「IoTの環境整備を進めていく上では、通信インフラ分野だけでなく、通信を利用してさまざまな事業やサービスを展開する分野の成長が欠かせない」と話す。その上でMVNOが果たす役割は、後者の利活用に関する部分になるとしている。

これまでは自身でハードやサービスだけを提供していた事業者がMVNOとなり、通信もセットで提供できるようになれば、消費者に提供したい価値を、自身で直接提供できるようになる。例えばパナソニックは、自身がMVNOとなってオフィス機器に通信機能を組み込み、法人向けにハードと通信を一体で提供する取り組みを実施している。MVNOとして通信を提供したい企業が増えれば、MVNE(仮想移動体サービス提供者)としてMVNOを支援をする事業者の収益向上にもつながり、ひいてはMVNOの市場全体の拡大にもつながっていくと考えられる。

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西角氏が提示したパナソニックの事例。自身がMVNOとなり、ハードと通信を一体で提供している。

 

無論、IoTに向けた取り組みはキャリア自身も進めているが、MVNOならではの優位点もある。その1つは、自社で回線を持たず、キャリアから回線を借りてサービスを展開していることから、複数の回線を組み合わせた柔軟なサービスを提供できることだ。例えばNTTドコモが、KDDIの回線を用いてサービス提供することは考えにくい。だがMVNOであれば、NTTドコモとKDDIの両方から回線を借り、それをセットにして提供することも可能な訳だ。

コンシューマーに向けて、複数の回線をセットにして提供することはあまり価値を見出しにくい。だが法人向けであれば、不足するエリアのカバーや、一方の回線に障害が発生した場合のバックアップなどとして、複数回線を同時に利用できるメリットが生まれてくる。実際、海外ではそうしたMVNOの事例も見られるようだ。例えば日本通信は米国で、ベライゾン・ワイヤレスとAT&T、2社の通信回線を用いて冗長化したATM向け通信サービスを、現地の子会社を通じ提供。この分野では大きなシェアを持つに至っているとのことだ。

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日本通信の米国子会社が提供するATM向けネットワーク端末。2つのキャリアのネットワークを統合して提供しているのが特徴。

 

柔軟なサービス提供がMVNOの魅力

 もう1つの優位点は、キャリアから借りた通信帯域や料金体系を、柔軟に変更してサービス提供しやすい点にある。ジャーナリストの石野純也氏はそうしたMVNOならではの柔軟性について触れており、例えばAndroidを搭載したパナソニックのデジタルカメラ「DMC-CM1」などに向けて、上り速度を高速化したアップロード専用のプランなどがあってもいいのではないかと話している。

石野氏はさらに海外のMVNOの事例についても触れ、スペインでは国内よりも、日本に通話した方が料金が安いMVNOのSIMカードなども提供されているとも話している。特に法人向けのIoTに用途を絞るならば、スマートフォンでの常識にとらわれることなく、大胆に帯域の使い方や料金の体系を変更したサービスの提供実現もしやすい。それだけに、MVNOがB2Bなどのビジネスを展開する上では、サービスに見合ったダイナミックな仕組み作りが求められるといえそうだ。

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石野氏が提示したスペインのMVNO、Lebaraの事例。自国内通話より日本向け通話の方が安価という料金体系を実現している。

 

コンシューマーを対象として昨年急拡大したMVNO。だが、かつてのISPの事例を振り返るならば、今後急速に収れんが進んでいくと考えられる。MVNOとして事業拡大していくのであれば、安定した売上を確保しやすいB2B向けの取り組みは必須といえるだろうし、そのためにはMVNOならではの特性を活かした独自性のある取り組みが必要だというのは、確かなようだ。 

 

執筆者

佐野正弘/福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。