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大盛況だった「ウェアラブルEXPO」からウェアラブルの未来を読み解く【topics】

1月13日~15日まで、東京国際展示場(東京ビックサイト)で「ウェアラブルEXPO」が開催された。大盛況のうちに幕を閉じた同イベントから、活動量計やスマートウォッチなどの普及で市民権を得たウェアラブルデバイスの未来像に触れてみよう。

次に来るデバイスはスマートグラス?

ウェアラブルEXPOは、リードエグジビジョンが主催する業界関係者向けのショーだ。基礎技術や部材などの展示・紹介と商談がメインで、最終製品そのものの展示は少ないか、あっても業務用が中心となり、一般ユーザーにとって馴染みの深い内容ではない。とはいえ、展示品の傾向を見ていけば、業界全体のトレンドや方向性をつかみやすいという点もある。

今回の展示全体では、スマートウォッチや活動量計のようなリストバンド型はあまり目立たず、最もよく姿を見かけたのはメガネ型のスマートグラスだった。業務用製品が多いのだが、作業中で両手がふさがった状態でもディスプレイを見たい、という要望に応えた製品が多い。

  • メガネスーパー

メガネスーパーの「b.g.」は、メガネ量販チェーンから登場したということで大きな注目を集めており、筆者は最後まで触れなかったほど。通常のメガネにアドオンするかたちでディスプレイを取り付けるタイプのスマートグラス。当初はB2B向けからスタートする模様。

  • ブラザー: エアスカウター防水

シャープはすでに発売済みの「エアスカウター」の防水防塵耐衝撃タイプを展示。既存ユーザーから防水・耐衝撃などアウトドア仕様への要望が大きかったとのこと。コンセプトモデルではあるが製品化の可能性は高そうだ。

  • 東芝

東芝からは、ハーフミラーレンズを使ったメガネに装着する小型のウェアラブル端末「Wearvue」。表示はすべてメガネのレンズに投影されるため、AR的な使い方も可能。

  • シャープ

シャープは片メガネタイプのスマートグラスを展示。見た目はSF風で個人的には好きだが、これを付けたまま歩き回りたいか聞かれると……。

  • ボストンクラブ

メガネの企画・デザインなどを行うボストンクラブが展示した、メガネにデバイスを装着する際の脱着マウント「neo-plug」。規格化することでアドオンタイプのデバイスを統一しようという試みは面白い。

  • カラーリンクジャパン

「スマートサングラス」は、自動車の運転中などに太陽が目に入ると眩しいため、強い光源が当たると視界の上1/3程度にシャッターを表示してくれるサングラス。朝夕と昼間では太陽の高さが違うため、光の色などから時間帯を判別してシャッターの高さを調整してくれる。

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コンシューマ向けの製品として展開する予定がないためなのか、各社とも形状や重さ、使い勝手の面などで、一般向けには受け入れにくいと思わせるものが多い。個人的には、今「スマートグラス」として登場しているものの大半はただのヘッドマウントディスプレイにすぎず、スマートグラスと呼ぶのは正しくないと思っている。そういう意味では、カラーリンクジャパンの「スマートサングラス」は本当の意味で「スマートな」サングラスだったと思う。

スマートグラスがただの表示デバイスを超え、本当の意味でのスマートなウェアラブルデバイスになるには、液晶やバッテリーなどの進化などをもう1つ2つ経てから、ということになりそうだ。

「着ける」から「着る」へ

ウェアラブルEXPOでは製品を構成する素材や部品についても多数展示されていたが、今回特に目立ったのが通電繊維の存在。通電繊維というと、すでにスマートフォン対応の手袋などに利用されている例もあるが、これからは回路そのものを繊維上に構築しようというのがトレンドになりそうだ。この分野については繊維・衣料の企業が積極的にプレゼンしていたほか、IT系の部材メーカーや、ベンチャー系企業なども多くの展示を行っていた。

  • グンゼ

グンゼは、「導電性ニット線材」を使って配線を施した衣料型デバイスを展示。線材が曲がることで抵抗値が変わることを利用して姿勢を判断したり、逆に電流を流してヒーター的に使うこともできる。

  • 東洋紡

こちらは東洋紡のフィルム状導電素材「COCOMI」を内蔵したシャツ。厚み0.3mmの極薄フィルムに導電シートが組み込まれており、電極と配線を用いて心電図の測定もできる。

  • エーアイシルク

エーアイシルクの通電繊維は、絹糸の繊維自体に導電性を持たせることで、絹が持つ吸水性やアレルギー反応の低さといった特性を生かしたまま、ウェアラブルデバイスに活用できる。天然素材由来の導電性繊維は珍しい。下の写真では左腕のスイッチ部分がエーアイシルク製。

  • ミツフジ

ミツフジの銀メッキ導電性繊維「AGposs」。銀の特性を持った繊維で、配線や電極の役割を担わせられる。意図やニット状の布地、カットファイバーなど形態もさまざまだ。

一方、旭化成のように繊維メーカーでありながら、導電繊維ではなく伸縮性のある銅線ケーブルを展示しているメーカーもあった。これは、導電繊維では抵抗が高すぎて、電力供給の観点からは絶対不足することが明らかなケースがあるため、まだ銅線が必要とのこと。コスト面も含め選択肢は多いほうがいい。

  • 旭化成

銅線を利用しながら、ゴム紐のような伸縮性を持ったケーブル「ROBODEN」。抵抗の少なさに加え、関節部などに使ってもたるみが出ないなどのメリットがある。

また導電繊維ではないが、セメダインが導電性を持った接着剤を展示。昨年にも話題になったのでご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、弾性を持った接着剤が一定の導電性も持つというもの。工業用途としてはもちろん、個人のDIY的な電子工作用としても、かなり可能性を秘めた製品だと感じさせられた。

  • セメダイン

接着剤なので様々なところに塗りつけて、導電性のある繊維どうしをくっつけてもいいし、そのものを回路代わりにしてもいい。写真では布地に直接LEDを貼り付け、接着剤で回路も描いている。

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導電繊維はまだ洗濯耐性が数十回程度だったり、折ったり伸ばしたりといった扱いへの耐性が低いといった問題があるものの、衣服として着てしまえば存在を意識しなくて済む。会場での盛り上がりぶりを見るに、今後、さまざまな製品が登場することを期待できそうだ。

ユニークな製品も多数展示

このほか、ジャンルを問わずユニークな製品やサービスも多く見られ、会場は多くの来場者で賑わっていた。他の展示会と共催ではあったが、ウェアラブル端末に対する注目度の高さを感じるショーとなった。

  • プロジェクター

シャープが展示していたMEMSビーム式小型プロジェクター。明るさは35ルーメン程度だがピント合わせが必要ない。スマートフォンにも押し込そうなサイズなので、ぜひ搭載してほしい。

  • 動物向けのタグ1

AnimCallが販売しているペット向けのウェアラブルデバイス「anicall」。タグをペットに装着し、行動解析や健康管理に活用する。同社は牛や馬などに着けるタグも扱っている。

  • 動物向けのタグ2

こちらはイノーバグローバルが販売する「MOTION」。anicallと同様に活動量の把握や健康管理を行える。

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ウェアラブルデバイスはApple Watchなども含め、話題性の割には苦戦している様子だが、まだ作り手もどのような使われ方をするのか、どうしたら使ってもらえるかの具体像が見えていないように思う。その点、業務用デバイスは用途が限られているので、作りやすいということなのだろう。デバイスの部品関連はどんどん進化しているので、今後コンシューマ向け製品は、これまでの常識にとらわれない製品作りが必要になりそうだ。

 

Author:マイナビニュース