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「CES 2016」で公表された新技術、ビジネス的側面から注目されるのは?【topics】

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世界最大級の家電・ITに関する見本市イベント「CES 2016」が、今年も米国・ラスベガスで1月6日より開催された。CESは、その年のITに関する動向を占う上で重要なイベントとして世界中から大きな注目を集めているが、今年のCESの展示や発表からは、どのような傾向が見えてきたのだろうか。

自動車とITのつながりが次のビジネスを生み出す 

筆者もラスベガスに赴き、CESでの取材を進めていたのだが、IoTやウェアラブルなど明確なテーマが見えていた従来のCESと比べると、テーマ性には乏しい印象を受けたというのが正直なところである。だがそうした中からも、今後を見据える上で大きな変化を与えるであろう要素をいくつか見ることもできた。

コンシューマー向けのプロダクトとしては、テレビなどの家電のほか、ウェアラブルやヘルスケア、美容など多種多様な展示がなされていたが、中でも大きな盛り上がりを見せていたのがVR(仮想現実)であった。「Oculus Rift」に代表される専用のヘッドセットを用いた、没入刊のあるVRの展示には、必ずといっていいほど列ができる人気ぶりで、その関心の高さを象徴していたといえよう。

では、ビジネス面で注目されるのはどのような分野になるのか? というと、1つは自動車であろう。CESでは多くの自動車メーカーが出展し、期間中には多くの主要自動車メーカーが発表会を実施するなど、自動車関連メーカーがCESに積極的に取り組んでいるのが、非常に印象的であった。

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CESの会場には、トヨタ自動車をはじめとした多くの自動車メーカーが展示を実施していた。 

ではなぜ、自動車メーカーがCESでの展示や発表に積極的なのか? というと、その背景にあるのはITとの結びつきが急速に進んでいることが挙げられる。それを象徴しているのが、自動車が直接モバイル回線経由でインターネットに接続し、ナビゲーションだけでなく、動画の再生やメールのやり取りなど、多彩な機能が利用できる車載インフォテインメントシステムだ。

インフォテインメントシステムの内容を見ればわかるように、車で利用するインタフェースなどが必要なことを除けば、その内容はスマートフォンに極めて近しいものだ。それゆえ、スマートフォン向けのチップセットを提供しているクアルコムが、自動車向けのチップセット「Snapdragon 602A」「Snapdragon 820A/Am」の提供を発表するなど、スマートフォンの技術を自動車に最適化する形で持ち込もうとしている企業も多く存在している。

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各社が展示する車載型のインフォテインメントシステムは、インタフェースなど一部の違いを除けば、スマートフォンに近しい存在となっている。

また、電気自動車(EV)に関する発表や展示も多くなされており、中でもテスラのライバルとして噂されるファラデー・フューチャー社がコンセプトモデル「FFZERO1」を発表したことが大きな話題となった。こうしたEVにも、スマートフォンと同じリチウムイオン電池が搭載されていることを考えると、先のインフォテインメントシステムと合わせて、自動車がスマートフォン化していることを理解できるのではないだろうか。

そして自動車のスマートフォン化が進めば、ITに関連する企業にとってビジネスの機会が大きく広がることにもつながってくる。それだけに、自動車がIT産業との結びつきを強めることで、どの程度影響を与える存在となるのかに、今後大きな注目が集まるだろう。

家庭内で活用されるIoTが注目を集める

もう1つ、ビジネスという側面で注目されるのは、やはりIoT(Internet of Things、モノのインターネット)であろう。今年のCESにおいても、IoTに関する展示は多数なされていたが、中でも多くの展示がなされていたのは、IoTを用いたスマートホームに向けた取り組みであろう。

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スマートキーやスマートライトなど、CESでは家庭に関するIoTの機器が目立っていた。 

家庭内にある家電機器などを最適な環境に制御できるスマートホームの概念は比較的古くより存在しているものだ。だがIoTの広まりによって機器同士がネットワークとより手軽に接続し、連携しやすい環境ができつつあることから、今後対応機器が増えることで、実用的なスマートホームの実現も夢ではなくなりつつあるように感じる。

だがそうした環境を実現する上で重要となるのが、各機器を集中管理するハブとなるべき機器の存在だ。例えばグーグルは、家庭内の温度を調節するのに活用されている、サーモスタットの「Nest」を買収、サーモスタットをスマートホームのハブとする考えを示している。またサムスンは、スマートホーム向けのプラットフォームを提供するSmartThings社を2014年に買収、これをハブとして活用する方針を見せており、今回のCESにおいては、テレビに接続するだけでSmartThingsのハブとして利用できるUSBモジュール「SmartThings Extend USB Adapter」の提供を発表していた。

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サムスンはSmartThingsのハブ機能をより手軽に導入できる「SmartThings Extend USB Adapter」を発表した。 

スマートホームの動向を占う上では、そうしたハブとなる機器の動向を占う必要があるだろう。ハブとなる機器が整備され、家庭に自然な形で、さまざまなIoT機器が入り込むようになれば、その市場は非常に大きなものへと成長する可能性があるだけに、注目しておきたいところだ。 

 

AUTHOR

佐野正弘/福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。