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新しい武器を使う前に、見直そう。IT革命の果実を取りにいけるように__DiS Innovation Forum 基調講演ダイジェスト(前編)【topics】

ダイワボウ情報システム株式会社は2016年2月18日、東京・六本木にて「DiS Innovation Forum」を開催した。モバイル&クラウドでワークスタイルに変革をもたらすための「視点」をパートナー各社・エンドユーザー企業に提案する内容で、基調講演、マーケットフォーカスセッション、ハンズオン、展示会場というマルチトラックの1Dayイベントは、これまで日本企業のIT化を「モノ」から下支えしてきた同社の「コト」へのビジョンを明確にし、パートナー各社に対し、これからの提案先と提案方法を養成する新たな第一歩を踏み出した印象だった。本稿では基調講演パート1をまずはダイジェストでお届けする。

「コト」から「モノ」へつなげる役目

オープニングセッションの登壇は、ダイワボウ情報システム(以下DIS)の販売推進本部マーケティング部部長の土方祥吾氏による、DISが描く法人ビジネスのビジョン提言だ。

「いつでも、どこでも」というテクノロジーの進化によって、ますます社会全体がボトムアップで変革のスピードを上げつつある今日。仕事のやり方も、人との関わり方も、そして価値観も大きく変わってきている。20年前、いわゆるクラサバ(クライアント・サーバシステム)のネットワーク基盤普及によってダウンサイジングが進んだが、法人におけるITビジネスもいまや第3のプラットフォーム(クラウド、モバイル、ソーシャル)へ軸足を変えつつある。特に急速に拡大するパブリッククラウド市場においては、その市場規模は2014年から2019年の間に約3倍に拡大すると言われている(IDC調べ)。

モバイル、クラウドといった市場動向はわかるが、自分のところ(企業)の業務にどう活用していけば、あるいは事業革新につなげていくにはどうすればいいのか、でまだまだ悩まれている企業は多い。理由としては、これら第3のプラットフォームはなにか1つのソリューションを導入するだけで解決できるものではないから。しかしながら手をこまねいているだけでは、すでにいくつかの業界で起きている革新(従前プレイヤーから見ると破壊)によって飲み込まれてしまう可能性は大きい。この変革をチャンスと捉えるのか、危機と捉えるのか」(土方氏)。

そんな環境下、DISはこれまでの「モノ」を中心としたサポートやマーケットプレイスを提供するのみならず、「コト」を中心とした法人ビジネスへの支援体制を大きく拡充する考えだ。

土方氏は「DISトータルブランドとして、安心安全なポートフォリオを構築し、先日発表した日本マイクロソフトとの協業によるモバイルビジネスセンター同様、第3のプラットフォームへの支援体制を強化していく。我々は法人企業、そして各メーカー、ベンダー、プレイヤーの皆さまに対してオペレーションからプロモーションまで可能な限り支援できる環境を提供し、皆さんと一緒にたくさんの成功を勝ち得る、また成長していけるよう努める」と話す。

具体的には「ビジネスマッチング」「クラウドアグリゲーション」「マーケットプレイス」の3つが連携したディストリビューターとしての戦略を掲げ、同社のシステムを再構築し、今夏までに提供していくことを発表。「マーケット情報やビジネスモデルの提案、メーカーと協業しながらの提案をわかりやすく見える化し、ビジネスマッチングおよび今までのオペレーションとは違うクラウドアグリゲーションにも対応したマーケットプレイスを設けて、皆さまのビジネスがしやすい環境を提供し、業務革新につなげていただきたい」と土方氏は構想を述べた。

この中で特筆すべきはサブスクリプション型ビジネスプラットフォーム。さまざまなベンダーとリセラー各社がビジネスを始められ、またリセラーは各ベンダーのクラウドサービスをチョイスし、月額課金あるいは従量課金などをエンドユーザー(法人)に提案できるものだ。MicrosoftのCSP(クラウド・ソリューション・プログラム)をとっかかりに構築していくそうだが、マルチベンダーであるDISは、ここに第3のプラットフォームに関わるさまざまなソリューションも組み込んでいく予定だ。

昨今、ビジネス市場においては業務支援向けのさまざまなクラウドサービスが存在している。既に利用している企業も多いわけだが、それらに横串をさし、かつ安心安全にエンドユーザーがすぐに導入できるようなプラットフォーム、特に国内ベンダーを招き入れた強力なプラットフォームは存在していない。日本版「クラウドブローカー」をDISが構築できるのか、期待がかかる。

日本社会の問題の本質

1Dayの基調講演で用意されたゲストセッションはインテル株式会社執行役員 土岐英秋氏、慶応義塾大学大学院 特別招聘教授 夏野剛氏、日本マイクロソフト株式会社業務執行役員 西脇資哲氏、そして人間性脳科学研究所所長 澤口俊之氏の4セッションだった。このうち、土岐氏と西脇氏の講演については後日改めて個別に詳細掲載するが、土岐氏からは変わりつつあるコンピューティング、特にIoTがビジネスの変革の推進力になる具体的な理由とそれに応えるためのインテルのIoTテクノロジーの優位性が話され、また西脇氏からはDISのパートナー販社に向けたモバイルテクノロジー、クラウドテクノロジーの「売り方」という視点とその具体的な方法が話された。

一方で、夏野氏からは、もっと世界や日本社会全体を俯瞰した、どちらかというと今の日本に足りないことを中心にした、だからこそ必要な意識改革の提言が話され、澤口氏からはビジネスマンが伸ばすべき脳力についての知見が話された。まずは夏野氏の「IT革命の本質と新リーダーシップ論~時代の変化に対応できる企業へ」をダイジェストする。氏の講演はこれまでに起きた3つのIT革命と、これからますます顕著となる第4のIT革命を軸に展開された。

OECD加盟国の中で日本のGDPが低空飛行をここ十数年続けていることは広く知られた事実。特に、トヨタ式カイゼンをはじめとする日本のものづくりにおける徹底的な無駄を省く取り組みは世界でも有数な一方、いわゆるホワイトカラーの生産性が著しく低いことはさまざまな経済紙誌が指摘しているとおりだ。

「しかし、日本のGDPが数パーセントの成長率であることは周知のことだが、日本と米国のGDP比較を知っている人はどのくらいいるのか? 米国がこの20年、どのくらいの伸び率で成長しているのかをご存じの方は?」ちょっと検索すればすぐにわかる、けれどもその視点で物事を理解しないかぎり、本当の意味でのITを理解し、その革新を享受することはできない、と話す夏野氏。

夏野氏は今日に至る日本の問題点を3つのIT革命といま起きているIT革命から解き明かしていく。ご存じの方も多いと思うが、夏野氏はNTTドコモの「iモード」立ち上げメンバーで、その後慶應義塾で教鞭を執る傍ら、十数社の社外取締役、また行政やさまざまな機関からの要請で委員や理事を務めている有識者である。当然、審議会で諮問や参考人として議論に参加することも多いわけだが、「この20年、ITによってさまざまなことが本当は簡単になったはずなのに、それを面倒な方向にしてしまっていないか?」と指摘する。

「選挙1つとっても、日本では2013年にようやくネットでの情報発信がOKになった。今度の参議院選挙ではいまだメールによる選挙活動はアウト。ちなみに、今年末に任期を終える米オバマ大統領は、8年前にSNSで当選した」「Fintechとか言われている一方で、いまだ銀行の窓口では印鑑のレギュレーション…」などなど、利便性によって本来は生産性を上げたり、あるいは付加価値をつけることに重きを置かなければいけないのに、なぜかそれを打ち消すようなことが起きてしまう(あるいは残ってしまう)のが「日本社会の問題の本質だ」を夏野氏は鋭く指摘する。

ビジネスのフロントラインが、ネットやリアル+ネットにシフトしている中で、実効性のあるシステムと運用ルールのバランスが取れていないのが、まだまだ残る日本社会特有の現状なのだろう。そして第2のIT革命は検索革命、第3のIT革命はソーシャル革命として、世界で起きている革命と日本の現実とのギャップにして痛烈に指摘していく。

「組織に属さなくても、属している人に比べてはるかに詳しい一般人や素人は多い。また一般役職が全体の数十パーセントもいて、はたして適切な情報伝達も情報収集も行えるのか」

20世紀に比べ社会構造が複雑化し、1対1の相関関係が1対多や多対多と複雑になったので、これまでの因数分解による要因分析では解き明かせなくなったのが現在。だからこそ、個人の能力の最大化が社会の課題になっている。

「教育においては平均値が高いことより突き抜けた人材の育成、均一性よりも多様性のあるシステムが必要で、企業においては利害調整型より率先垂範型のリーダー像が求められている。リーダーの役割はより重く、辛いものになるが、これなくしては生き残れない」

これからのリーダー 

現在、第4のIT革命__AI革命が始まっている。2045年にはAIが人間を超えると言われているが、これからの企業リーダーはどうすべきなのか? 

夏野氏は「IT企業と呼ばれる会社は、そもそも2000年以前にはなかった。ITとはすべての企業に必要なことであり、ITはIT企業のものじゃない。これまで経験に頼っていたことがすべてデータで可視化される時代だ。すべての企業がITによってより付加価値をつけることが日本の将来に結びつくし、つけられるはずだ。リーダーはビジョンを持ち、新しい武器(IT)を使う前に、まずは見直そう。IT革命の果実を取りに行けるように」と話す。

この20年の(苦渋を含む)経験を一度捨てて、どういうシステムを、なんのために、どうやって、何の結果を生むためにこれから日本企業は臨むのか。DiS Innovation Forumに参加するすべての企業人に対するメッセージのように受け取れた講演内容だった。

ビジネスマンで真に伸ばすべき脳力は何か

基調講演の最後にはテレビでもお馴染みの脳科学者 澤口俊之氏の講演。最近の脳科学から明らかになってきた「ビジネスマンが真に伸ばすべき脳力」を解き明かす内容だった。澤口氏は、脳における人間性の中枢は「前頭前野」にあると考えてさまざまな研究を行う人物。この脳力は人間性知能(HQ)と呼ばれており、このHQが人間と人生とに大きな関わりがあると澤口氏は説く。

講演では、さまざまな研究によってわかってきた人間特有のHQの高低と好奇心・探究心との関係、社会生活や仕事における協調性のための嘘やHQを向上させるための方法など、人事担当者が聴講するとためになるであろう盛りだくさんの1時間であった。

 

AUTHOR

小林正明(GMBA編集部 編集長)_雑誌編集に従事する傍ら、2010年以降はもっぱら関心事がモバイルに移り、教育、ビジネス、医療におけるモバイルの先端事例を追う中で、「日本のモバイルITは、本来届くべきところに届いていない」ことを痛切に実感。日本に残された最後のチャンスはモバイル革命だと信じ、GMBAに参画する。