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IT革命の果実を取るために、一歩先をどう捉えるか__DiS Innovation Forum IntelのIoT戦略【topics】

ダイワボウ情報システム株式会社は2016年2月18日、東京・六本木にて「DiS Innovation Forum」を開催した。モバイル&クラウドでワークスタイルに変革をもたらすための「視点」をパートナー各社・エンドユーザー企業に提案する内容で、基調講演、マーケットフォーカスセッション、ハンズオン、展示会場というマルチトラックの1Dayイベントは、これまで日本企業のIT化を「モノ」から下支えしてきた同社の「コト」へのビジョンを明確にし、パートナー各社に対し、これからの提案先と提案方法を養成する新たな第一歩を踏み出した印象だった。本稿では基調講演パート2として、インテル株式会社 執行役員 土岐英秋氏による「マーケットの変化に対するインテルの戦略(モバイルからIoTへ)」をダイジェストする。

500億個の機器と85%の未接続センサー

IT関連ニュースで「IoT」というキーワードを聞かない日はないほど、今まさにモノのインターネット接続が喧伝されているわけだが、日常生活の中で目の当たりにするほど、まだ具体的にIoTが何なのかは広く知られていないこともあり、多くの人にとっては一歩先にビジネスになるかも?という程度だろう。しかし逆に言えばまだまだ人々の食いつきがいいキーワードでもある。本稿でお伝えするDiS Innovation Forum 基調講演パート2は、例えるならインテル社が考えているIoTの戦略、まもなく夜明け編という内容だった。この戦略(ヒント)をビジネスチャンスと捉えるか、まだまだ先のことだと傍観するのかは、イコール未来はどうありたいかに直結するだろう。

登壇したのはインテル株式会社 執行役員 土岐英秋氏。冒頭、「世の中にはさまざまな業種が存在し、そのさまざまな業種においてIoTのカタチ(ソリューション)は異なる。じゃあそれをどういうふうに活用するとこれまでにない効果が表れるのか、という提案を含めてお伝えしたい」と期待感を高めた。

昨年、創業50周年を迎えたインテル。その歴史はムーアの法則のとおり、2年ごとに倍化するトランジスタの歴史と言ってもよい。土岐氏はそのトランジスタの進化を車の進化に置き換えて、いかに高性能化(消費電力、コスト、サイズを抑えながらより高度で多機能な新しい機能を実現)したかを聴講者に理解しやすく話を進める。そしてこの半導体の進化があったからこそ、IoTが生まれたと続ける。つまり、タスクオリエンティッドで始まったコンピューティングが、掌に収まるライフスタイルにまで浸透し、今後は身につけなくても周りの環境がセンシングし、フィードバックをしてくれるコンピューティングに向かっているというわけだ。

トランジスタの進化を1971年に登場したBeatleで例えると、当時130km/hが2015年には3500倍となる48万2700km/hの速度を実現、同じくエネルギー効率もコストも進化を実現したことになる。

では、IoTの市場はどんなものになっていくのか。2015年、約150億個のデバイスがネットワークにつながった。2020年に向かってはそれが500億個になっていくとインテルは予測している。つまり、「今後350億個のデバイスが売れる可能性がある」と土岐氏は言う。また、この数字は単純にデバイスの数が増えることだけを意味するのではなく、前述のムーアの法則同様、扱われるデータ量が指数関数を超えるほど今後拡大することを意味する。

「一方で、すでに存在するセンサー群のうち、85%がネットワークに直接つながっていない。今後はセンサー機器の入れ替えによって直接つながるところにもオポチュニティは(機会、チャンス)あるが、実はさまざまな理由でネットワークのつながる機能を持ちながらつながっていない現実がある。これらを(ゲートウェイによって)ネットにつなげることで生まれる新しい価値に、別のビジネスとしてのオポチュニティがあると考えている」

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IoTをどうビジネスにするのか、どこがビジネスになるのか

可能性はわかった。では、(インテル以外が)IoTをどうビジネスにするのか、どこがビジネスになるのか。土岐氏はこう続ける。

下図はインテルが考えるIoTの戦略だ。よく言われる概念図だが、IoTとはモノからネットワーク、そしてクラウドへつながる全体があってはじめて効果が見える化する。前述のとおりモノ(エッジ側)は、85%のネットワークにつながっていないセンサー群のオポチュニティ、そしておそらくスマートデバイスと呼ばれるであろうネットワークの機能を持つデバイスが新たにインストールされるオポチュニティが期待される。

そのエッジ側ではデバイスのほかに、何が重要(ビジネス)になるのか。キーワードは「コネクティビティとセキュリティ、そして管理機能だ」とインテルは考えている。どういうことか。350億個と仮定したものすごい数の新しいデバイス群を、マニュアルで設定するわけにはいかない。そうすると「遠隔操作で、我々の使いたいように設定を変えなければいけない」となる。ここにコネクティビティの重要性(ビジネス)が生まれる。センサーが付いていてネットワークが付いていればいいというわけではないことは、スマホを日常的に使っている人であれば十分理解できるだろう。クラウド側やサービス側に合わせて、どのようなセンシングをするのか、あるいはどのようなセンシングデータにするのかを遠隔操作で設定する。ここには、クラウドまでデータが上がっていくうえで、フォーマットの違いやネットワークのプロトコルの違いを超えてちゃんとつながるコネクティビティが必要になる。

ネットワーク側は、大量に上がってくるデータをクラウド側にスムースにつなげる役割だが、エッジ側からローデータ(生のデータ)が上がってくるとさすがに負荷が大きすぎる。そうなると効率的にネットワークを使うためにはどうしたらいいのか。つまりエッジ側とネットワーク側での調整が必要になる。いろいろな方法が考えられるが、例えばリアルタイム性の対策が重要な場合は、クラウド側で処理を行うよりもエッジ側で対応を行うほうが有益である。ここに対するインテルのアプローチは「垂直的戦略、水平的プラットフォーム製品、強力なエコシステム」だと土岐氏は言う。

垂直的戦略とは冒頭の「世の中にはさまざまな業種が存在し、そのさまざまな業種においてIoTのカタチ(ソリューション)は異なる」ことを指す。業種によってIoTに期待されることが変わるからこそ、特化した戦略が必要になる。しかし、IoTとしてのプラットフォーム自体は水平的のほうが効率は良いでしょう、というのがインテルの考えだ。業種ごとにカスタマイズされたソリューションは、あるところにはいいが似て非なる隣には通用しないでは、ちょっとしたことでも変更に負荷がかかる。つまりできる限り水平でオープンなアキテクチャ、そして垂直に特化したさまざまなパートナーが参加でき、相互運用ができるプラットフォームを用意することが、競争原理も働き、結果としてエンドユーザー企業のニーズに応えることができる。これをインテルは目指しており、ベンダー各社にとってもビジネスチャンスにつながると捉えている。

つなげるフェーズだけがビジネスではない

土岐氏の講演後半は、世界ですでに始まっている具体的なIoTの業界別活用事例、同社の顧客・OEM先へ行ったインタビューから見えてきた今後の課題と可能性、インテルアーキテクチャのストロングポイントとインテルIoTプラットフォームの詳細、またIoTが必要とされる市場トレンドまで多岐で中身の濃い内容に及んだ。

すべてを取り上げると膨大な文字量になるので割愛するが、個人的に講演後半で印象深かったことが3つある。1つは、すでにかかっている膨大なコストやこれまで当たり前と思っていた費用の一部をIoTによって置き換えると、結果として新しい価値が生まれる可能性が高いことだ。つなげるフェーズでまずはビジネスが生まれる。もう1つは、もう始まっている、という現実。まだまだ誰にもビジネスチャンスはあるが、掴まないかぎりチャンスにはならない。そして最後が、膨大なデータをどう分析し、ビジネスに変えるかだ。

翻っていまある多くの日本社会の風景を考えてみよう。これだけ生活シーンに浸透しているスマートフォンやタブレットを、いざビジネス活用しようといったフェーズになった途端、いまだその第一歩もおぼつかない企業はまだまだ多い。そしてIT自体をビジネスにしているはずの企業も、一次的にも副次的にもそのメリットすらよくわからず、結果として顧客企業との結びつきも先細っていく現実。それでいいのか?

21世紀が始まってもう16年。今一度、ITとはなんなのかという原点に立ち返り、これからのITをどうビジネスにつなげるかを本気で考え、モノ売りからコトという付加価値をつけたビジネスの組み立てこそが、成否をわける気がしてならない。

なお、インテルのIoT戦略に関し、詳しいホワイトレポートなど見たい方はWEBサイトを参照していただきたい。

 

AUTHOR

小林正明(GMBA編集部 編集長)_雑誌編集に従事する傍ら、2010年以降はもっぱら関心事がモバイルに移り、教育、ビジネス、医療におけるモバイルの先端事例を追う中で、「日本のモバイルITは、本来届くべきところに届いていない」ことを痛切に実感。日本に残された最後のチャンスはモバイル革命だと信じ、GMBAに参画する。