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法人向けに強いこだわりを見せた注目の「VAIO Phone Biz」、販売は順調に進むか【topics】

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マイクロソフトのWindows 10 Mobile対応スマートフォンが国内に続々投入されている。そして2月4日には、ソニーからスピンアウトしたパソコンメーカーのVAIOが、注目のWindows 10 Mobileを搭載したスマートフォンを発表したことから、大きな注目を集めている。

Windows 10 Mobileを搭載した“真”VAIO Phoneが登場

そもそもVAIOのスマートフォンが大きな注目を集めるに至ったのには、約1年前の3月12日に、VAIOが日本通信と共同で開発したAndroidスマートフォン「VAIO Phone」の影響が大きい。VAIO Phoneは日本通信が開発や販売を担当し、VAIOがデザイン協力したスマートフォンであったのだが、日本通信が事前に箱を公開するなどVAIOファンの期待感を高めた一方で、実際に登場したVAIO Phoneは、VAIOらしい強いこだわりを感じさせるものではなく、ODMメーカーから調達したものに若干手を加えたと見られる、性能・デザイン共に平凡な内容の端末であったのだ。

そうしたことからVAIO Phoneは、発表当初よりVAIOのファンを中心として大きな批判が起きる事態となり、評価を大きく落とす結果となってしまった。そうしたVAIO Phoneの前例があったからこそ、VAIO自身が直接開発する“真のVAIO Phone”がどのような仕上がりになるのか、大きな注目が集まっていたのである。

そして今回発表された「VAIO Phone Biz」は、Windows 10 Mobileを搭載した5.5インチのミドルハイクラスのSIMフリースマートフォンであり、デザイン面でもアルミ削り出しボディを採用するなど、高級感を高めている。VAIOらしい強いこだわりが随所に見られる端末に仕上がった。そうしたことからネット上での評判を見る限り、VAIOファンなどにはおおむね好意的に受け入れられているようだ。

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新たに発表された「VAIO Phone Biz」。アルミ削り出しボディを採用するなど多くのこだわりが見られ、ファンからの評価はおおむね好評なようだ。 

だがそもそもVAIOが、先のVAIO Phoneや、今回のVAIO Phone Bizを手掛けることで、価格競争が激しくなりつつあるスマートフォン市場へ積極的に参入しようとしているのは、そうしたコンシューマー層をメインターゲットに据えているためではない。VAIOは法人向にスマートフォンを販売するために、この市場へ参入したといってもいいだろう。

先にも触れた通り、コンシューマー向けのスマートフォン市場は、国内においてはiPhoneの独壇場といってもいい状況であるし、VAIOがターゲットとしているSIMフリーの市場も、価格競争が非常に厳しい。VAIOをスピンオフしたソニー自体がスマートフォン事業で苦戦しているだけに、ソニーの後ろ盾がなく、規模が小さくなったVAIOにとって、いくらブランド力があるからといっても、参入して容易に参入して勝ち抜ける状況ではないことは確かだ。

だが法人向けであれば、まだスマートフォンの市場開拓は大きく進んでいないし、先行して市場開拓に取り組んでいる、パソコンで培ったブランド力も活かしやすい。しかもコンシューマー市場と比べ確実かつ安定した販売を確保できる可能性が高いことから、当初よりコンシューマー向けにはあまり注力せず、法人向けをターゲットとして参入することを決めていたといえよう。

実際初代のVAIO Phoneも、当初より販売先の企業が機能やアプリをカスタマイズしやすくする「オートセットアップ機能」が搭載されていた。また、発売後の日本通信のVAIO Phoneに対する取り組みを見ても、スマートフォンへの不正侵入を検知する「モバイルIDS」を導入するなど、法人向けの取り組みが多くなされている。

さらにVAIO Phone Bizでは法人向けという方向性を一層強く打ち出しており、OSにAndroidではなく、企業の導入が多いWindowsとの親和性が高い、Windows 10 Mobileをあえて採用している。それだけでなく、ディスプレイやキーボードなどと接続してスマートフォンをデスクトップパソコンのように扱える「Continuum」の搭載にこだわり、チップセットにContinuum対応のSnapdragon 617を採用しているのだ。

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VAIO Phone Bizは法人需要開拓の武器として、Continuumへの対応を打ち出している

Continuumは特に法人からの引き合いが大きい機能だと言われているが、当初はSnapdragon 810/808といった高性能のチップセットにしか対応していなかった。だがVAIOは、マイクロソフトにSnapdragon 617のContinuum対応を積極的に働きかけるなどして、対応を正式に実現。こうした点からも、いかにVAIOが、VAIO Phone Bizの法人販売に力を入れているかを見て取ることができよう。

販路に関しても、いくつかのWindows 10 Mobile搭載スマートフォンを販売するメーカーの販売協力をしているダイワボウ情報システムに加え、大手携帯キャリアの一角であるNTTドコモを販売パートナーに加えているというのも、注目されるポイントだ。NTTドコモは日本マイクロソフトとタブレットの法人向け販売で協力関係にあるが、Windows 10 Mobile端末の販売を手掛けるのは今回が初めてである。

NTTドコモは法人に向けても強力な販売網を持つだけに、VAIOも同社からの販売に向けては積極的に協力する姿勢を見せている。それはVAIO Phone Bizのスペックを見ても明らかで、NTTドコモが持つ4つの周波数帯全てに対応させているほか、キャリアアグリゲーションにも対応し、理論値で下り最大225Mbpsを実現するとしている。さらにSIMフリー端末ながら、NTTドコモのネットワークへの接続を保証するための相互接続性試験も実施するとしており、いかにVAIOが、NTTドコモからの販売に期待を寄せているかを見て取ることができるだろう。

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NTTドコモから販売されることを受けてか、VAIO Phone BizはNTTドコモが使用している主要な周波数帯の全てに対応するほか、キャリアアグリゲーションにも対応している。
Windows 10 Mobileの成熟が成功の鍵となる

しかしながら、VAIO Phone Bizの法人向け販売に向けては、いくつかのハードルがあるのも事実だ。最大の障壁となるのは、やはりWindows 10 Mobileにかかる部分であろう。国内では長い間、Windowsを搭載したスマートフォンが投入されてこなかっただけに、いくらWindows との相性がいいとはいえ、実績が不足していることから検証にも時間がかかると見られる。Windows 10 Mobileは日本語の対応がまだ弱い部分が多いだけに、本格導入に向けてはOS側の改善もまだまだ求められるし、そこにはマイクロソフトとの協力が欠かせないだろう。 

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VAIO Phone Bizが採用するWindows 10 Mobileは、Windowsとの親和性の高さが注目される一方、国内での利用実績が極めて少ないことが懸念材料でもある。 

もう1つ、懸念されるのは目玉機能のContinuumである。VAIO Phone BizでのContinuumはディスプレイの接続にMiracast、つまりWi-Fiを用いる。そのため周辺の電波環境によっては干渉の影響を大きく受け、遅延が起きやすいという問題が発生してしまうのだ。特にオフィスでは、社内のWi-Fiだけでなく、個人のスマートフォンやワイヤレスキーボード・マウスなどさまざまな機器が電波を発しており、干渉の要素が多いだけに、この点はやや心配なところだ。

端末自体の評価という意味では、前モデルのVAIO Phoneとは大きく異なる好印象を与えることに成功したVAIO Phone Biz。強力なパートナーも獲得しているだけに、法人での販売拡大には期待が持たれるところだが、法人向け市場はコンシューマー市場とは異なる難しさがあるのも事実。日本におけるWindows 10 Mobileスマートフォンの市場が立ち上がったばかりの中にあって、どこまで販売を伸ばし、市場での実績を作り上げられるかが、大いに注目されるところだ。

 

AUTHOR

佐野正弘/福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。