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コンシューマー市場で苦戦のウェアラブル、真に活きるのは法人需要だ【topics】

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ニュースサイトや新聞等等を日常的に確認していれば、モバイル機器のビジネス/教育/医療用途での活用に関わるニュースは、毎日のように目に入ってくるはずだ。本連載では、国内の最新モバイルビジネス関連ニュースから、見逃せない情報をピックアップして解説していく。

ウェアラブルデバイスの現状

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とともに、近年注目を集めているのが、腕時計型や眼鏡型など、体に身に着けて利用するデジタルデバイス、通称“ウェアラブル”だ。“腕時計型コンピューター”に代表されるように、ウェアラブルに向けた取り組み自体は非常に古くからなされているが、近年急速に注目を集めるようになったのには、スマートフォンの登場が大きく影響している。

“手のひらのコンピューター”というべきスマートフォンが広く普及したことで、デバイスの小型化に関する研究開発が進み、傾きなどを検出するセンサー技術も急速に発展したことが、ウェアラブルの発展には大きく影響している。さらに「Bluetooth Low Energy」など省電力で無線通信ができる手段が登場したことで、スマートフォンと接続し、小容量のディスプレイやバッテリーしか搭載できないウェアラブルだけでは限界がある機能を拡張しやすくなったことも、ウェアラブルの発展に貢献したといえよう。

最近では、グーグルがAndroidと連携しやすいウェアラブル向けプラットフォーム「Android Wear」を提供。ウェアラブルを開発しやすい環境が整えられたことで、デバイスの数も急増する兆しを見せている。さまざまな見本市イベントに訪れると、スマートフォンよりウェアラブルの方が大きく盛り上がっている印象を筆者も受けている。

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ソニーの「SmartWatch 3」のように、Android Wearを搭載した時計型ウェアラブルが最近急増している。

 

しかし、ウェアラブルはその注目度とは裏腹に、消費者に積極的に受け入れられているかというと必ずしもそうではなく、市場の広がりという面では課題を抱えている。その大きな理由は、消費者がウェアラブルの必要性を見出しにくいことにある。市場で最も多く存在するウェアラブルは、腕に装着して利用するタイプの時計型のデバイス。だが実際に使ってみると便利ではあるが、腕時計と比べデザイン性に乏しい上、サイズも大きく、バッテリーの持ちが悪いなどの問題を抱えており、積極的に興味を持つ人達は限られているようだ。

スマートフォンは携帯電話の代替として普及したが、ウェアラブルが腕時計など既存の機器の代替となるには不足している要素が多いというのが、普及を妨げる大きな要因となっているといえよう。アップルの「Apple Watch」の登場にウェアラブル普及の期待をかける向きもあるようだが、爆発的な普及に至るにはまだ課題が多いというのが正直なところではないだろうか。

また、今後のウェアラブルの動向を見る上で気がかりなのが、眼鏡型デバイス「Google Glass」に関する動きだ。というのも今年に入ってグーグルが、Google Glassを同社の研究部門である「Google X」から卒業させ、プロトタイプの販売を終了させるなど、実質的にその取り組みを縮小しているのだ。

Google Glassはウェアラブルが注目される大きなきっかけとなったデバイスの1つであり、Google Glassの登場を受けて眼鏡型デバイスの開発に注力する企業が増えるなど、ウェアラブルの大きな流れを作ってきた。それだけにGoogle Glassの取り組みが縮小したことは、ウェアラブルの今後に大きな影を落としたことは、間違いないだろう。

法人利用に活路を見出せるか

こうして見ると、ウェアラブルデバイスが広がるにはまだ課題が山積しており、普及にはかなり時間がかかるように見える。だがそれはあくまで、コンシューマー向けのウェアラブルに関しての話だ。実は視点を変えて、特定業務など法人用途に向けたウェアラブルとなると、その可能性は大きく広がってくる。

その大きな理由は、コンシューマー向けには必須となるデザイン性や長時間駆動の小型バッテリーといった要素が、法人向けになると重要ではなくなり柔軟なハード設計ができるからだ。例えば工事現場などで使用するウェアラブルであれば、デザイン性よりも堅牢性が重視されるだろうし、長時間持続させる現場で使用するデバイスの場合、腰に大容量のバッテリーを付ける、あるいは直接電源をとるなどの設計をしても、業務環境にしっかり対応できるのであれば受け入れられやすい。

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ブラザーの業務用ヘッドマウントディスプレイ「AiRScouter WD-200S」。ヘッドマウントユニット単体ではなく、専用のコントロールボックスと接続して利用する仕組みだ。

 

そうした要素よりむしろ、ディスプレイ付きのコンピューターを身に着けることでスマートフォンやパソコンを取り出す必要がなくなり、一層場所を選ばず作業できるようになることから、法人向けではウェアラブルならではのメリットが活きやすいといえる。あくまで現時点の話ではあるが、ウェアラブルはコンシューマー向けより、利用シーンが限定された法人向けに展開した方がよいのではないかと、筆者は感じている。

ちなみに最近では、サムスン電子の「Gear S」や、LGエレクトロニクスの「LG Watch Urbane LTE」のように、ウェアラブル単体でモバイル通信ができるデバイスも登場している。スマートフォン不要で通信ができるウェアラブルが広がれば、活用の幅も大きく広がることから、今後大いに期待が持てるところだ。

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LGエレクトロニクスの「LG Watch Urbane LTE」。時計型デバイスながらLTEによる通信機能を備え、VoLTEによる通話にも対応する。

 

執筆者

佐野正弘/福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。