Log in

Apple Pay普及に重要な役割を果たすSquare Reader - 松村太郎のApple先読み・深読み【topics】

Appleは、本気で、Apple Payの普及に取り組もうとしている。

Apple Payは、iPhone 6シリーズ、iPad Air 2 / iPad mini 3以降、Apple Watchで利用できるモバイル決済システムだ。iPad Proでも利用可能で、噂されている新型4インチサイズのiPhoneへの対応も確実視されている。

Apple Pay

今後Appleが販売するモバイルデバイスは、Apple Payが利用可能であるもののみになっていくかもしれない。そして、このモバイル決済が利用できる地域を、世界へ広げていこうと考えている。2014年10月に米国でスタートし、2015年夏からは英国でサービスが始まった。その後もカナダで、そしてオーストラリアに続き、2016年2月に中国でサービスがスタートした。

中国ではUnionPayとの提携によって、Apple Payのサポートを実現しており、たった2日間で300万件の新規登録が行われている。中国国内での利用はもちろんだが、中国におけるiPhoneユーザーの属性から考えると、世界中へ旅行する人々の利便性向上が、Apple Payの魅力を作り出していくだろう。

Apple Payが本領を発揮するのは旅行?

旅行の際、現地通貨の両替なしで快適に過ごして帰ってこられるかどうか。旅行先の快適さや安心感を作り出す上で、Apple Payをはじめとするスマートフォン決済サービスは注目を集めるだろう。日本のように現金での支払いが中心の国であったり、カード決済が普及していない地域は、こうしたコンタクトレス決済が新たな市場を開拓する可能性もある。

ちなみに筆者の住む米国の街で、日本の紙幣は人気がある。スーパーや雑貨店などで、財布からちらりと日本円の札が見えると、驚かれることが多い。非常に美しい、というのだ。すでに都市で生活する人々の決済の一部は、この美しい紙幣からICカードに移行しつつあるが。

ただSuicaやnanacoなどのICカードを使った電子マネーも、海外のユーザーからすれば、紙幣同様、ローカルなものであり、日本に降り立ったときに入手しなければならないものには変わりないのだ。これが普段使っているスマートフォンで済むなら、それは便利に決まっている。

ただ、旅は非日常を楽しむわけだから、普段と違う紙幣をなんとか手に入れて、伝わるかどうか分からない言葉で買い物をする、という点もまた醍醐味かもしれない。その点で、普段と違う不便さを経験する、という旅の楽しみが損なわれてしまうのかもしれない。

一方で、移動が自由になる世界において、旅が非日常から「準・日常」へと変化しているならば、やはり決済の不便さは取り払われるべき、とも考えられる。皆さんはどうとらえるだろうか。

公共交通機関での利便性というカードが使えない米国

Apple Payは、単なるプリペイド型のサービスではなく、設定するデバイスそれぞれにクレジットカード決済用のトークンを保存し、これを使って店頭やオンラインでのカード決済を行う仕組みだ。決済にはTouch IDによる指紋認証が行われ、利便性を高めつつ、磁気カードで横行していたスキミングや盗難による不正利用の被害を抑える点をメリットとしている。

店舗側は、カード利用の際の決済手数料に変化はない。しかし既存のカード決済端末を、NFC対応のものに置き換える必要がある。小規模な商店にとって、その設備投資をしてまでApple Payをサポートすべきか。2014年10月と最も早くサービスがスタートした米国ですら、判断は難しいものがある。

まだまだ使える店が少なく、顧客の「便利だ!」という声を見つけられずにいるのだ。

イギリスで実現していた公共交通機関へのApple Payでの乗車のような、交通機関での利用はよい戦略だ。Suicaもそうだったが、人々が生活の中で必ず利用する交通機関で利用できるようにし、これを他の購買に押し広げる戦略は有効だと感じる。

しかしながら、そもそも米国では、公共交通機関が主力の移動手段となる都市は限られ、サンフランシスコ周辺もクルマ社会のままだ。つまり、公共交通機関での普及が、決済サービスの普及とさほどリンクしていないため、Suica的な発想を抱きにくいのだ。最近、エクソンモービルのガソリンスタンドがApple Payをサポートするようになった。クルマ社会においては、ガソリンが交通に関連する支払い、と言えなくもないが……。

普及のカギとなりそうな新しいSquare Readerの登場

Apple Storeで、Square Readerの新しいパッケージが発売となった。これまでの磁気カード決済が行えるリーダーに加えて、Apple Payなどを利用できる新しいリーダーがセットになり、50ドルで購入できる。

Square Reader。Bluetooth接続でSquareレジアプリとつながり、Apple Payを始めとするコンタクトレス決済とクレジットカードのICチップによる決済をサポートする。なお、これまでの次期によるスワイプには、既存のイヤフォンジャックを利用するリーダーを利用する

ちょうど手の平に載るサイズ、正確にはクレジットカードの短辺を包み込めるサイズの正方形をしており、上部にはコンタクトレス決済のロゴが見える。また側面にはスリットが入っており、ICチップを搭載したクレジットカードを差し込んで使うことも可能だ。

この製品は充電式で、スマートフォンやタブレットとBluetoothで接続し、無線で読み取ったデータをアプリで処理することができる仕組みだ。そのため顧客は、クレジットカードを店員に手渡さずに決済を行えるようになる。また、Squareレジを使っている場合は、microUSBポートで接続し、電池切れの心配をせずに設置できる。

Apple Store等で49ドルで販売されるSquare Readerのセット。NFC決済をこの価格で実現できる点は、Squareにとっても大きな魅力を作り出すことになった

SquareのApple Pay対応機器は、店舗側のコストを最小限に抑えることができ、またSquareを導入してきた小規模な店舗に対しても、コンタクトレス決済を導入する現実的な手段が得られたことを意味している。Appleは、大いにこの製品を後押しし、Square導入店舗のApple Pay対応を拡げていくべきだろう。

新Square Readerで感じる、Apple Payのメリットとは?

日本でSuicaを経験していると、いくらiPhone 6sシリーズで指紋認証が劇的に速くなったといっても、そのスピードや正確さにはまだまだ大きな隔たりがあると感じている。それだけ、日本のICカードと読み取り機器の基準が高く設定されているかが分かる。

Apple Payが日本のSuicaのスピードに追いつこうとはしていないため、オリンピックに向けて外国人向けに多少用意するとしても、日本の自動改札をApple Payで通れる未来は訪れないと考えている。

しかしApple Payと既存のクレジットカード決済や現金決済を比べれば、明らかにスピーディーでシンプルになっている。比較対象が異なるため、遅いと感じるApple Payであっても、十分スマートを名乗ることができるのだ。

AppleがApple Pay普及のテコにSquare Readerを使いたいように、Squareにとっても「いかに手軽にApple Payをはじめとするコンタクトレス決済に対応できるか」を武器にSquareの普及拡大につなげて行きたいだろう。

スピード面ではなく、その他のシチュエーションで考えてみると、Apple Payが便利に利用できる場面は少なくない。

利便性を経験してもらう場面をいかに作り出すか。これがApple Payにとっての課題になっている。こうした中で、もしかしたら、地元の小さな商店やフードトラックが、Apple Pay体験の主力の場となるかもしれない。

例えばSquare導入の例で上げたフードトラックは、大抵、窓口が非常に高い場所にあり、カードや現金の受け渡しは日本人の筆者としては難がある。手の平に載せた小銭を渡そうものなら、こぼれ落ちて顔に当たるのだ。

もしSquare Readerがぶら下がっていたり、車のボディの外側に磁石で張り付いていたりすれば、ちょうどよい高さでiPhoneを近づけて決済を済ませることができる。こうした決済のスタイルを、AppleとSquareは共同で提案していくと良いのではないか、と思う。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura

 

Author:マイナビニュース