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高耐久モデルで欧米を攻める京セラの海外スマートフォン戦略【topics】

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「TORQUE」シリーズに代表される高耐久モデルで、米国を中心として世界の法人需要開拓を進めている京セラ。昨年にはドイツ・フランスへの進出を果たすなど、欧米を主体に市場拡大を積極的に進めている。2月にスペイン・バルセロナで開催された携帯電話・モバイルに関する見本市イベント「Mobile World Congress」(MWC)にて、通信事業本部 通信機器経営戦略部長である能原隆氏に、同社の法人向け携帯端末ビジネスの現状について話を聞くことができたので、その内容を紹介しよう。

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京セラの能原氏は、Mobile World Congress 2016会場で、同社の法人向け端末ビジネスについて説明してくれた。
堅牢性の高いモバイル機器を求める企業とは

能原氏によると、昨年進出を果たしたドイツとフランスでの端末販売は、現在のところ「堅調というのがふさわしい状況」だという。元々高耐久性モデルは法人からのニーズが高いが、その分爆発的に売れ行きが伸びるものではない。それゆえ販売を急ぐのではなく、地道に市場拡大を進めている状況のようだ。

では、どういった企業がTORQUEを採用しているのだろうか。やはり建設や物流などの現場で利用したいというニーズが高いとのことだが、導入が進んでいるのは大企業よりも、中小規模の企業が多いという。その理由について能原氏は、「欧州では京セラが携帯電話メーカーとして知名度が高い訳ではない」ことが影響しているとのこと。大手スマートフォンメーカーとは異なり市場でのブランドが確立していないことから、営業などで機能や性能などを丁寧に説明し、端末のよさを理解してもらった上での導入がほとんどだそうで、小規模の企業から地道に市場開拓を進め、業界での認知を高めていく狙いがあるようだ。

そうしたことから欧州の他国への展開も、まずはフランスとドイツ2つの国で実績を積み、ビジネスを確立したうえで拡大を図る方針だという。「高耐久モデルは広告宣伝で知名度を拡大するモデルではないことから、時間が必要だ」と能原氏も話しており、まずは進出した国での足固めを重視する考えを見せている。

では、同社のメインとなっている米国での事業は現在どのようになっているのだろうか。京セラの高耐久モデルは、スプリントを皮切りとして、ベライゾン・ワイヤレス、AT&Tの3キャリアに提供されており、法人向けだけでなく、日本同様個人向けにも販売がなされている。

米国市場でも販売の主流となっているのはスマートフォンだが、企業のニーズに応えるべくハード・ソフトともに柔軟な対応を進めているとのこと。それゆえ最近では、ユーザーニーズに応えるべく従来とは異なる2種類の端末を提供するようになったという。

1つは、より画面サイズが大きいスマートフォン、いわゆる“ファブレット”だ。京セラは今年、5.7インチのディスプレイを採用した「DuraForce XD」というAndroid端末をAT&T向けに提供しているが、その理由として能原氏は、「現場で図面を見たいなど、大画面に対するニーズを満たすため、大画面のモデルを投入した」と話している。

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京セラが北米向けに投入した「DuraForce XD」は、5.7インチの大画面を採用しながら高耐久性を実現。

そしてもう1つは「アドバンストフィーチャーフォン」、要するにAndroidをベースとして開発されたフィーチャーフォンの導入だ。日本でも部材の調達が困難になってきたことから、従来のフィーチャーフォンに代わってAndroidベースのフィーチャーフォンを投入するメーカーが増えている。この状況は米国でも同じようで、やはり従来のフィーチャーフォンを作り続けることは難しくなっているという。

一方で、フィーチャーフォンに対するニーズは、スマートフォンの普及によって大きく減少したとはいえ、「大手携帯事業者は一定数規模のフィーチャーフォンユーザーを抱えていて、そうした人たちは(スマートフォンの広まりに)びくともしない」(能原氏)など、日本と同様の傾向が見られるという。そうした人達のニーズに応え続けるうえで、米国でもアドバンストフィーチャーフォンの導入が必要になっているのだそうだ。

実際京セラは今年、AT&T向けの「DuraXE」で米国でも高耐久性を備えたアドバンストフィーチャーフォンの投入を開始している。今後は従来のフィーチャーフォンを、全てアドバンストフィーチャーフォンに置き換えていく方針とのことだ。

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同じく北米向けの高耐久フィーチャーフォン「DuraXE」。根強いフィーチャーフォン需要に継続的に応えるべく、国内同様Androidをベースに開発されている。

また能原氏によると、高耐久スマートフォンの開発が、通常のスマートフォンの開発・販売にも影響を与えている部分があるという。京セラは米国で、高耐久端末だけでなく、プリペイド事業者向けの低価格スマートフォンを多く提供するなど、一般向けの端末もいくつか手掛けている。だが最近では米国でも、日本のように、“24ヵ月払い”といった割賦販売が広まりつつあるとのこと。そうした販売状況の変化を受け、端末にも壊れにくく、長く使えることが求められるようになったという。

特に割賦で購入したスマートフォンは、壊れてしまえば残債が残るためユーザーが受けるダメージは大きい。そうしたことから、京セラでは高耐久スマートフォンで培った技術を生かし、日本だけでなく米国でも、既存の技術を活用して頑丈で壊れにくい端末を提供しているとのことだ。

では今後、京セラは高耐久スマートフォンの付加価値を高めるため、どのような取り組みを進めようとしているのだろうか。その1つとして研究がなされているのが、透明ソーラーパネルの導入となる。

これはフランスの仏サンパートナーテクノロジー社が開発したもので、ディスプレイにソーラーパネルとして機能するパネルを貼り付けることで、太陽光によってスマートフォンの充電ができるようにするもの。もちろんフル充電という訳にはいかないが、3分の充電で1分間の通話ができることを目指し、開発を進めているという。

昨年のMWCでも、透明ソーラーパネルを搭載した高耐久スマートフォンが参考展示されていたが、能原氏によると「その後発電効率が大幅に上がっており、1年でだいぶ進歩した。ラボスペックであれば要求水準を実現できている」とのこと。今後より検証を重ねて、実用化に向け取り組みを進めていくとのことだ。

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新たな付加価値として、透明なソーラーパネルを備え、太陽光による充電が可能な高耐久スマートフォンの研究も進めているとのこと。
高い技術を活かした製品の投入が販売拡大につながる

海外では京セラ以外にも、高耐久スマートフォンを提供する企業はいくつか存在する。だが能原氏は、「他社との競争はあまり気にしていない。それよりも先進的、かつ革新的な技術によって特徴を磨き、いい商品を作り続ければ採用してもらえるのではないか」と話す。高い技術に裏打ちされた性能によって顧客をつかんだことが、同社の高耐久スマートフォンが人気を博す大きな要因となっていることから、技術を一層磨くことが、販売の拡大にもつながると考えているようだ。

京セラの法人向け端末事業は、コンシューマー市場と比べればスピードは遅いかもしれない。だが高い技術をベースとして着実に実績を積んでいることは確かなだけに、一層の市場拡大に期待が持たれるところだ。

 

AUTHOR

佐野正弘/福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。